スポーツジムで

  • 2015年03月26日

ずっと昔、スポーツジムへ数回通ったことがあります。
隅で自転車こぎをしている私の前で、オーバー50ぐらいに見えるマダムが、背筋を鍛えていました。
ぐっとのけ反るその姿は、アスリートさながら。
黙々と背筋を鍛える様子は、修行僧のようにも見えました。

と、トレーナーがやってきて「〇〇さん、やり過ぎです」と声を掛けました。
そんなに反らせると却って腰を痛めてしまうから、もっと低い位置まででいいというのです。
トレーナーのアドバイスをじっと聞いていたマダムはしかし、それまで同様ののけ反り具合でトレーニングを続け出しました。

おっと。
お前のアドバイスなど聞く気はないっちゅうことですか?
それとも実は訳ありの二人で、現在喧嘩中だから意地でも言うことを聞いてやらないなんて、別次元の理由があったりするんですか?
と、私は自転車こぎをしながらたくさんの質問を心の中で呟きました。

ふっ、ふっ・・・と、マダムは声を漏らしながら高い位置までのけ反り続け、トレーニング。
その側で呆然とマダムを見つめるトレーナーという図は、シュールでした。

遣り過ぎている人を見ていると・・・応援したくなる気持ちはあるのですが、一方で滑稽であったりもするので、笑っちゃうことも。

「僕とおじさんの朝ごはん」では、登場人物の僕とおじさんが、こうした状況に出くわします。
腰の悪いおじさんのリハビリを少年がサポートするため、トレーニングに付き添うシーンです。
そのリハビリ室には、超人的なトレーニングをする男が。
呆然とそれを見つめるおじさんと少年。
遣り過ぎている人を見て、呆気に取れられている二人の姿から、小さなおかしみが滲み出ていれば成功なのですが、どうでしょうか。
このシーンでは、おじさんと少年の心の近さも表現したいと思いました。
真面目にトレーニングしないおじさんと、どうしてこれができないかなと不思議がる少年。
二人の遣り取りから、この二人の間にある信頼や、友情や、居心地の良さなども漂っていればいいのですが。
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「私は電子書籍版派よ」という方は、こちらもどうぞ。

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