ボーナス一括払い

  • 2016年04月14日

友人と買い物に行きました。
別の友人へのプレゼントを二人で選び、ランチをした後、ブラブラとウインドーショッピングをしていると・・・。
友人がパールのネックレスに一目惚れをした様子。
が、それは「いち、じゅう、ひゃく、せん・・・」と桁を数えていかないと金額がわからないほど、値札にゼロがたくさん並んでいる。
私だったら迷うことすらないぐらいの高額の品に、友人は熱い視線を注いでいます。
「最高級の品なんですよ」と言う店員さんはさらに「ボーナス一括払いもできますよ」と悪魔の囁き。
迷い出す友人を見ていて、ふとOL時代のことを思い出しました。

OLをしていた頃、突然会社から今度の夏のボーナスは現物支給になると言い渡されたことを。
最初聞いた時、意味がわからず周囲の人に「なに? どういうこと?」と聞き回りました。
働いていたのは靴のメーカーでしたので、工場に靴があります。
この靴をボーナスとして支給するというのです。
ね、よくわからないでしょ。

たとえば・・・ボーナスを10万円貰う予定だった社員は、現金を銀行口座に振り込んでは貰えない。
その代りに、自社工場にある10万円分の靴と交換できる商品券を、支給しましょうということ。
これはつまり、友人に靴を買って貰うよう頼みなさいってことなんですね。
持っている商品券を使って1万円の靴と交換したら、それを友人に1万円で売ったら、そのお金はあなたのものになるという論理。
理解するのに時間がかかってしまいました。
気の毒がって友人たちがこぞって靴を買ってくれたので、私は予定していた金額分を手にすることはできましたが、なかにはなかなか買ってくれる人を見つけられない社員もいて、大騒動が続きましたっけ。
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パールのネックレスを買うかどうか思案中の友人を眺めながら、彼女に現物支給の心配はないだろうかと考えていました。
友人が意を決し財布からクレジットカードを出そうとしたので、思わず私はその手を掴み「ボーナスはちゃんと現金で出る?」と確認しました。
目を真ん丸にした友人はすぐに、私が経験した現物支給のことを思い出したのでしょう。
その瞳が一瞬揺らぎました。
彼女は靴を買ってくれた友人の一人でした。
しかしすぐにしっかりと頷き「大丈夫だと思う。会社の売り上げは伸びてるから」と答えました。
なによりです。

帰りの電車の中で、友人は大事そうにパールの入った買物袋を抱え、興奮した様子をしていました。
幸せそうな友人を見ていて、私まで幸せな気持ちになりました。
とはいうものの、ボーナス一括払いで購入する時には、なにが起こるかわからないということも頭の片隅に置いておくようお勧めいたします。
ま、ボーナスなんてない身の私には、その言葉自体に憧れちゃいますが。

小説「恋愛検定」の台湾版

  • 2016年04月11日

小説「恋愛検定」の台湾版が発売されました。
「恋愛検定」には恋愛の神様が登場します。
ある日突然、この恋愛の神様が現れて「検定に合格するよう頑張って」と言われます。
恋愛検定には上はマイスターから、下は初心者クラスの4級までの区分があり、受検者は現在のレベルに合わせた級の合格を目指します。

恋愛の仕方というのはその人の本能に近い部分を映し出すものなので、周りからは滑稽に見えることも。
それでも恋愛のすったもんだは心を成長させてくれますし、いい恋愛は心を潤してくれます。
今順調な人も、トラブっている人も、恋愛検定の合格を目指して奔走する登場人物たちと一緒に、恋愛について考えてみていただけたらと思います。
ha-to
この恋愛検定でマイスターを合格できそうなぐらいの技量をもつ女友達がいます。
狙った男は確実に仕留めます。
彼女は失敗という言葉を知らないんじゃないかと思います。
外見は・・・これが世間の尺度でいうところの美人ではない。
フツーなんですね。
それじゃなんでこうも次々と男たちを仕留めていくのかと、ほかの友人たちと分析をしたことがあります。
そこで出した結論は「彼女の表情が男心を掴む」というものでした。
彼女は男性の話を、好奇心いっぱいといった表情で聞くのです。
それが、すっごくつまらない話であったとしても。
目をキラキラさせて「それでそれで?」なんて絶妙なタイミングで相槌まで打っちゃう。
夢中で自分の話を聞いてくれる女性を、嫌いになんてなりませんよね、誰だって。
彼女は表情が豊かで、喜怒哀楽を豪快なまでに表に出します。
男が昔の大変だった話なんかし出したら、顔を曇らせ、まるで自分が体験したかのように哀しそうな表情をする。
そして男が自慢話を始めれば、すごいねぇなんて感動したような表情を作り、さらに驚いてみせたりもします。
このようにして、フツーの外見の彼女は男性を仕留めていくのです。

が、彼女の場合長続きしない。
男心は簡単に手に入るものなので、それほど大事にしようと思えないのかもしれませんし、別の獲物が気になっちゃうようなのです。
次の獲物もすぐに彼女の手に落ちるわけですが。

友人らの食事会に、彼女が参加するとわかった時には「メモ帳とペンを持参するように」というのが仲間内のギャグになっています。
少し期間が空くと、彼女の話に出てくる登場人物が大幅に変わっていたりして、頭が混乱してしまうので、整理するために、メモを取りながらの方がいいよといった理由が隠されています。

長編と短編

  • 2016年04月07日

小説には長編と短編があります。
なにが違うかといえば、言葉通りその長さです。
私は長編専門です。
たまに「短編を書いてみませんか?」とお話を頂戴します。
そんな時には「長編と短編では使う筋肉が違うので、私には短編は書けません」と申し上げお断りします。
「そうは言わずにトライしてみては」と仰る方には、「マラソン選手なのに、同じ陸上競技だから、100m走もやってみたらどうですかと言われているぐらいムチャに感じます」と答えます。
すると「両方お書きになる作家も多いですよ」と言う編集者も。
そういう時は・・・黙ってテーブルの1点を見つめてじっとしている。
そのうちに編集者はじわじわとダメなんだなということを理解してくれて、「それじゃ、長編で」と妥協してくれます。
そうなったらこっちのもの。
「はい。頑張りますっ」と大きな声で宣言する、というのがいつものパターンです。
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長編と短編では書き方がまったく違うのだろうと思います。
書いたことがないので、あくまで推測なのですが。
また楽しみ方も長編と短編では違いますね。
読者としてはどちらも読みますし、どちらも好きです。
長編では登場人物たちの変化や成長をゆっくりと味わえるのがいいですし、短編では1シーンに凝縮された喜怒哀楽が、とても身近に感じられるのがいいですよね。

同じように連続テレビドラマと映画の楽しみ方にも違いがありますね。
連続テレビドラマの場合、トータルの時間はかなり長くなりますから、登場人物に寄り添っている時間も長くなり、小説でいえば長編の楽しみ方に近い感じでしょうか。
一方の映画は、一気に気持ちを作品の中に入っていける没入感が強く、これは短編の味わい方に近いように思います。
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NHKBSプレミアムドラマ「嫌な女」が最終話を迎えます。
4月10日(日)午後10時からが第6回の最終回となります。
連続のテレビドラマでしたから、変わっていく徹子と、変わらない夏子に寄り添う時間が長くなり、これによって深く作品を堪能していただいていたならば、とても嬉しいのですが。
俳優の皆さんをはじめ、多くのスタッフさんたちによって、丁寧に真摯に作られた作品です。
どうぞ最終回をお見逃しなく。

ロッカーの鍵

  • 2016年04月04日

美術館には大抵荷物を預けられるロッカーがあります。
利用するには100円を入れて錠を掛けますが、開錠と同時にその100円は戻ってきます。
私はバッグにあれこれ入れる習慣があり、結構重いので、空いていればこのロッカーを利用します。
折り畳み傘や手帳、筆記用具、リップなどを収納しているポーチといった品々のほか、コートなどもロッカーに入れます。
そして身軽な状態で館内を歩きます。

その日もそうして館内を回遊し、絵を堪能し終え、ロッカーの前に戻ってきました。
鍵を穴に差し込むと、カチッと100円玉が落ちる音が。
で、鍵を捻る。
ところが鍵穴がびくともしない。
でもって、開かない。
さっきより強い力で鍵を捻ってみますが、ダメ。
そうそう、私はドジだった。
と、己のことを思い出し、ロッカーの番号と、鍵についている札の番号が合っているかを確認。
が、合っている。
故障?
あー、できれば私が壊したのではありませんようにと祈りながらスタッフを探します。
受付にいた女性スタッフに「鍵が開かないんです」と訴えると、「100円が落ちる音はしましたか?」と聞かれたので、激しく頭を上下に動かし「しました、しました」と答えると・・・。
その女性スタッフは、私が握っていた鍵に手を伸ばしてきました。
そしてその鍵を摑むと「このむきで、穴に差し込んでください」と言い、「このむきです」と繰り返しながらそのまま鍵穴に差し込めるよう鍵を縦にした状態で戻してきました。
えっ?
鍵を逆に差し込んでいたなんて、しょうもないオチ?
が、確かに鍵穴に差し込んだ鍵を左右に動かしてはみましたが、一旦抜いて、上下を逆にしてのトライはしませんでした。
そんなことこれっぽっちも思いつかなかったのです。
自分のダメっぷりがたまらなく恥ずかしくなり、「やってみます」と小声で言って、ロッカー前に戻りました。
で、言われたむきで鍵穴に差し込み、捻ってみると・・・すっと鍵が動きました。
なんちゅう応用力のなさ。
鍵が動かなかったら、上下を逆にしてみようと思いつかなかった自分が腹立たしいやら、情けないやら。
kagi
そのまま何事もなかったように帰れればよかったのですが、残念ながらそこは先ほどの受付の前を通過しないと、外に出られないつくりになっています。
あまりに恥ずかしいので、さっきの人が休憩に行っていたらいいんだけどと思ってしまう。
そして受付の前に。
休憩に行っていなかった。
そこで、ポンコツですみませんといった風情を全身から発しながら「お世話様でした」とペコリと頭を下げて受付前を通過。
駅に向かって歩き出しながら、今度開錠できない時には、必ず鍵を逆さにしてトライしてみるぞと誓ったのでした。

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