手を差し伸べてくれたのは

  • 2016年12月19日

いつものように道に迷っていました。
手には、目的地までの道順を記した地図を印刷した紙が。
が、その地図と、今見えている景色を合わせることができない。
印刷した紙をぐるぐる回して、景色と合せようと奮闘。
しかしわからない。
maigo
そこで信号待ちをしていた男性に声を掛けました。
「この通りは〇〇通りですか?」と。
すると「最近就職で東京に出て来たばかりで、よくわからないんです」との答えが。
見れば、スーツがまだしっくりきていないような若い男性。
時は春。
社会人になったばかりのフレッシュマンの模様。
「そうでしたか。それは失礼しました」と私は言い、歩き出します。
が、地図をどれだけ回しても、見えている景色と一致しない。
どうしたもんかと思っていると、「よかったら」と背後から声が。
振り返ると、先ほどのフレッシュマンが胸ポケットからスマホを取り出し「探しましょうか?」と言ってくれます。
私の手元の地図を覗き込み「そこに書いてある住所に行きたいんですか?」と聞いてきたので、「そうですそうです、そうなんです」と私は答えました。

フレッシュマンは地図のアプリを開き、住所を入力すると「あっちのようですね」と言い、「僕もあっち方向なので、途中まで一緒に行きましょう」と提案。
二人並んで横断歩道を渡り、オフィス街を進みます。
しばらくしてフレッシュマンは足を止めました。
「僕はここなんですが、そこの角を右に曲がったら左にあるみたいです」と説明をしてくれました。
私は「ご親切にしていただきまして、どうも有り難うございました」と感謝の言葉を口にして、頭を下げました。
フレッシュマンは「いえいえ」と言って、ビルの中へと入っていきました。

見上げれば、そのビルは某大手企業の本社ビル。
大丈夫、君ならきっと出世する、と勝手に彼の未来予想をして歩き出しました。

これまでたくさん道に迷い、その度にたくさんの人に助けて貰いました。
そうしたなかでフレッシュマンが心に残ったのは、自分は知らないながらも、困ってるようだから調べてあげようと思ってくれたことが、驚きでしたし嬉しかったから。
彼がスマホを操作しだした時、そうか、その手があったかと自分のバッグに入っているスマホの存在を思い出しましたが、ここはやはり「そういうものは持っていませんの、私」という体の方がいいだろうと判断するような小狡い自分には目を瞑り、彼の優しさにただ浸りました。

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