メイクを

  • 2017年10月16日

友人がメイクするのを見学していたことがあります。

旅館に泊まった翌朝、寝不足気味でちょっとぼんやり。
部屋のテレビからは出演者たちの元気な声が聞こえている。
朝食を食べるには階下の食堂に行かなくてはいけなくて、身支度を整える私たち。
私のメイクは年々簡素化されていて、色付きの日焼け止めクリームを塗ったら終わり。

が、友人はそうではない。
私は彼女のメイクを一部始終見学することに。


目の下になにかを塗った。
なんだ? コンシーラー的なものか?
それからファンデーションを塗る。
アイシャドー、アイライン、ビューラー、マスカラ、眉、ハイライト、チーク、唇・・・もう順番を覚えていない。
ただ友人の顔がどんどん立体的になっていくのを、建設現場を見学しているような気分で眺める。
どんどん完成していくのです。

このメイク中友人はフツーに私とお喋りをしているし、時々はテレビにツッコミを入れたりするぐらいの余裕まである。
全身全霊でメイクをしている訳じゃないのです。
技を極めていて、集中してなくてもメイクに影響は出ない様子。
匠です。

メイク道具を片付け始めた友人の顔は見慣れたものに。
「終わり?」と私が尋ねると、「うん。なんか、いつもと違うでしょ。今日は簡略版だから」と答えました。
「いつもと同じに見えるよ」と私は言いましたが、友人はそんなことはないと聞く耳を持ちません。

記憶を辿ってみると・・・昔はここまでの時間と手間を掛けていなかったような。
「昔よりメイク時間は長くなってる?」と聞くと、そうだと答えました。
「これから先どうする?」と更に質問すると、「一日がかりになるかも」と言って笑っていました。

先日年上の先輩女性に会った際、メイク時間のことを尋ねてみました。
すると・・・私にもそんな時があったわと懐かしそうな顔をしました。
でもある日、もういいと思ったのだそうです。
シワシワでもシミがあっても、これが今の私なんだから。
そう思う日が突然やって来たそうです。
そして化粧水だけを残して、後はすべて捨ててしまったのだとか。
「今は顔を洗ったら化粧水をつけて終わり」と言って微笑む先輩は、とても美しく輝いていました。

まだそこまでの境地には達していない私も友人も、やがてそう思う日が来るのでしょうか。
その時感じるのは自由な気分でしょうか。

その日が来るのが待ち遠しいような、怖いような・・・。


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