炊飯器が

  • 2017年10月26日

何気なくキッチンの隅に目をやりました。
炊飯器の周りに水が溜まっている。
炊飯器の前でマグカップに水を入れたり、ちょっとした作業をしたりするので、その時に零れた水を放置していたせいだろうと思いました。

翌日また同じように炊飯器の前に水があるのを発見。
そこで、ふと気付く。
そういえばここ最近ご飯が美味しくなかった。
それは炊飯器が壊れていたからだということに。
すぐに気付けよって話なのですが、普段からご飯の味は日によって大いに違う。
内釜の目盛りに合わせてきちんと水を入れればいいのに、大体こんなもんだろうと誤差を許してしまう。
結果、毎回出来が違う。
なので、しばらくご飯が上手に炊けなくても「今回は水が多かったかな、ハハ」と笑って済ませてしまい、炊飯器の故障に気付くのが遅れた模様。

すぐに炊飯器を購入しようとネットで探し始めるも、迷宮に入りそうになる。
種類がたくさんあるし値段もバラバラ。
どの蘊蓄を信じればいいのかもわからない。
そしてゆっくり吟味している時間はない。

キッチンには黒色の物が多いので、まずは黒い炊飯器にしようと決める。
3合まで炊ければいいとし、無洗米を使うことが多いので、無洗米の炊飯メニューがある物の中で一番安いのにしました。
翌日の午前中に到着希望にして注文。

注文してから30分ほど経った頃。
もしかして私が手入れをしていなかったせいで、調子が悪かったのではとの疑念が浮かぶ。
明日やろう、今度やろうと思いながら放っておいた蒸気口の部品。
洗ってみることに。
洗剤を使って洗い、それでも取れない汚れは爪楊枝でほじほじ。
そして夕飯のために炊飯予約。
午後7時になって炊飯器の周囲をチェックすると・・・水が溜まっていない。
動揺する私。
やっちまったのか。
壊れていないのに壊れたと勘違いし、新しいのを買ってしまうという大失敗をやらかしたのか。
恐る恐る食べてみる。
不味い。
ベトベトしている。
やっぱり壊れているとわかりほっとする。
電化製品が壊れていて良かったと、心の底から安堵したのは生まれて初めて。

翌日届いた炊飯器。
取扱説明書を捲っている手が止まったのは、お手入れについて書かれたページ。
毎回使用後に内蓋と蒸気口を取り外し、洗うと書いてある。
さらに週に1度は水だけを入れてスイッチを押し、煮沸クリーニングをしろとある。
衝撃を受けてしばし固まる。
これまでの人生で、内蓋と蒸気口を毎回洗ったことなどなかったし、煮沸クリーニングという言葉については初めて知る。
初めてのことが続き言葉を失くす。


文庫「僕とおじさんの朝ごはん」には、ケータリング業を営む健一というオッサンが登場します。
私ほどではないにしろ、食のプロなのに手を抜くことに一生懸命。
テキトーに仕事をこなしています。
そんな健一が、いくつかの出会いといくつかの経験をしていくなかで、彼の料理が変わっていきます。

これまでの作品と比べて、料理や食事に関するシーンが多くなっています。
小説は言葉だけで表現するもの。
味を言葉だけで表すのは、実はとても難しくハードルは高い。
試行錯誤をしながら書きました。
健一の料理をまるで実際に味わったように感じて貰えたら、とても嬉しいです。

そうそう。言い忘れていました。
新しい炊飯器で炊いたご飯はとても美味しいです。


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