ライブハウスで

  • 2018年03月12日

友人A子は10代の頃から音楽が好き。
聴くだけでなく、自身でピアノを弾くし、ギターも弾く。
よくコンサートにも出掛けていました。
A子の自宅にはレコードやCDが大量にあったことを覚えています。

A子の歴代の彼氏たちは皆音楽好きで、飲み会などで音楽の話になると、あーだこーだと意見や感想をぶつけ合っていましたっけ。
そうした話についていけない私は「へぇ」といった程度の薄い興味しかもたず、ここぞとばかり飲み食いに集中するようにしていました。

そんなA子はやがてOLになり、結婚し、母ちゃんになり、独身に戻りました。
そしてしばらくご無沙汰していた音楽と、向き合うようになったそうで。
ライブハウスで演奏するから来てよと誘われました。
花を持ってライブ会場に行くと、ステージにはピアノとドラムの他には椅子が1つあるだけ。
予定時刻から少し遅れてステージにA子が登場。
ピアノの前に座ります。
ドラムに1人が着き、バイオリンを持った人が左端に立ちました。
そして1つあった椅子には、アコースティックギターを持った人が座りました。

どんな音楽なのだろうと思っていると、1曲目が始まりました。
皆が知っている曲でドーンと盛り上がってとなるのかと思いきや、オリジナル曲を演奏しています。
それがどんな曲かと言いますと・・・環境音楽っぽい。
人間ドックでMRI検査を受ける時、動作音を遮断するため着けられる、ヘッドフォンから流れてくる音楽のような感じ。
毎年人間ドックで良く言えば優しい、悪く言えば摑みどころのない音楽を聞かされる度に、もう少しノリのいい曲に変更して貰えないだろうかと思っていました。
ノリのいい曲だと検査に悪影響が出るのでしょうか?
薄い検査着を着せられ、機械に入れられているという状況下にあって、癒しの音楽は全然心に響かないのですが、それは私だけでしょうか。

A子が好きだった音楽はロック系との記憶があったので、てっきりそういう類の曲だと思っていましたが、まさかの環境音楽系。
そうとは思わず、やや風邪気味だった私は、家を出る前に風邪薬を飲んでいました。
おわかりですね?
眠気が私を襲うのです。
1曲目からはまずいってと、私は自分を叱咤します。
ですが、眠い。
太腿を叩いたり、コーヒーを飲んだりで、なんとか1曲目を乗り切りました。
が、2曲目もやはり1曲目とほぼ同じ曲調。
どうしてこんな前の方の席に座ってしまったのだろうと後悔するも、今更席を移動する訳にもいかず、太腿を叩き続ける。
しかしながらやがて眠気の方が勝利。
1度「おはようございまーす」とA子の声を耳にしたような気がしましたが、その前後の記憶はなし。

拍手の音に驚いて目を覚ました時には、A子がいくつもの花束を抱えて、ステージの中央に立っていました。
どうやらライブは終わったようです。
爆睡してしまった私はA子に合わせる顔もなく、受付を手伝っていた人に花束を渡すと、そそくさと退散しました。

私に残された選択肢は2つ。
寝てませんと嘘を押し通すか、寝たのを認めて風邪薬のせいにするか。
迷っているうちにA子からメールが。
「私たちが目指しているのは、心を解放する音楽なので、ライブ中に寝てくれるのは嬉しいことでした」と書いてありました。
おとなー。

様々な経験をするうちに、好きな音楽が変わったということなのでしょうか。
小説や映画でもこういうことはありますよね。
若い頃読んだ時にはちっとも面白いと思わなかった小説が、年を重ねて再読してみたら、心に響いてきて号泣した・・・なんてことがありますから。

今回の教訓。
友人のライブの前に風邪薬は飲まない。
風邪薬を飲んだ時には、後ろの方の席か、壁際の席にする。


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