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僕とおじさんの朝ごはん

  エピソード  

登場人物の少年の趣味を天体観測にしようと決めました。
関連本を読み漁り、ふと、最後にプラネタリムに行ったのはいつだったろうかと遠い目になりました。
中学生の頃が最後だったように思います。
そもそもプラネタリムは今もあるのでしょうか。
編集者が調べてくれたところでは、数としては結構ある様子。
それではと、行ってみることに。
昔体験したプラネタリムとは別次元になっていました。
映像が凄い。
メチャメチャリアル。
が、冷静に考えてみれば、宇宙に行き空中遊泳したことはないので、それがリアルと言えるのかとの疑問も浮かびます。
とはいうものの、彗星にのって宇宙を移動し、太陽に手を振ったり、ほかの星と衝突しそうになって「おっとっと」なんて呟いている時に、自然と身体を左に体重移動しちゃっていて、衝突を避けようとしていたりする感覚はなんとも不思議なものでした。

プラネタリムで見せられるのは、とてもとてもスケールの大きな世界。
大き過ぎてちょっと酔ってしまいそうになるほど。
もし不安を胸に抱えている少年が、これほど大きな世界を知ったらどんな思いがするだろうかと考えた途端、少年の姿がくっきりと私の頭に浮かびました。
登場人物が見えた瞬間でした。

対するおじさんは、ぐうたらな料理人にしました。
料理というのは奥が深く、こだわればどこまでもこだわれる世界です。
が、手を抜こうと思えば、思いっきり簡単に済ませられる世界でもあります。
最近では便利な半加工品があり、プロ仕様の調味料も売っています。
また千切りにしてくれていたり、下茹でまで済ませてくれていたりする品も。
私はそうした品々に厚く感謝を捧げ、利用している者の一人です。
料理をするということは、天体が感じさせてくれる世界観と究極の場所にある行為に思えて、登場人物のおじさんを料理人とすることに。
それは、とても現実的で身近な世界。
食べなければ生きていけない。
だから調理をし、食事をする。
美味しい食事をして幸せだった一日も、宇宙のスケールから見れば、一度瞬きをする程度の時。
その僅かな時間を愛おしみ大切に過ごそうとするのが、人。
こうした人たちの営みを描きたいと思いました。

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