改札前で

  • 2016年04月28日

地下鉄に乗ろうと階段を下りている時でした。
階下から男性の怒鳴り声が。
改札口を目指して歩き進めるうち、男性がなにを言っているか聞き取れるように。
どうも背後から足を蹴られたことに激昂している模様。
改札口の前で怒鳴っているその男性は、60歳オーバーぐらいに見えます。
怒鳴られている男性も、同じく60歳オーバーぐらい。
その間で固まっている様子の男性の駅員さんは、20代に見えます。
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とにかく激しく怒っている。
口から泡を飛ばして「よくも俺の足を蹴りやがったな」と言っています。
相手の男性は時折反論するのですが、怒っている方はさらに怒るばかり。

この事態を若い駅員さんはどうやって収束させるのだろうか。
出来ることなら最後まで見届けたい気持ちでしたが、先を急いでいたので、三人の横を通り過ぎるしかありませんでした。
電車の中ではいろんなことが起こるものです。

その時思い出したのは20年も前のこと。
午後11時過ぎの電車に乗っていました。
車内は比較的空いていて、私はドア横に座っていました。
向かいに座っている20代ぐらいの女性を、酔っているのか、眠いのかなと思って見ていました。
頭がぐらぐらしていたからです。
と、突然その女性が吐き出しました。
げっ。
私はびっくりして、ただその女性を見つめるだけでした。
近くに座っていた人たちが席を立ち、その女性から離れていきます。
すると1人の若い女性が彼女に近付きました。
少し離れたところに座っていた女性です。
この女性も20代ぐらいに見えます。
その人はセカンドバッグの中身をざっと座席にぶちまけるて空にすると、酔っている女性の顔の前に出し「これに吐いて」と言いました。
さらに背中を擦ってあげ「大丈夫、大丈夫」と声を掛けだしました。
この人凄い・・・。
まったくの他人に、ここまでしてあげることができるでしょうか?
私はその女性の行動に感動し、心の中で拍手を送りました。

大喧嘩になることもあれば、人の優しさに驚くこともある・・・電車の中ではいろんなことがあるもんですね。

笑顔

  • 2016年04月25日

まだ余震が続き、怖い思いをしている方が多いと思います。
そんななか激しい雨が降るなど、自然はなんて残酷なんだろうと恨めしさを覚えます。

終わりの見えない避難生活はしんどいでしょう。
これからの生活を考えれば、不安が大きく胸に溢れるでしょう。

「頑張って」なんて気軽に声を掛けられる類のことではないと重々承知していながら、それでもやはり「頑張って」と言いたくなってしまいます。
被害に遭われた方たちが、一刻も早く元の生活に戻れますように。

あるボランディア団体に所属している友人がいます。
その友人はとても困難な状況になっている世界各地に行き、援助活動をしています。
そうなった理由は自然災害だけではなく、人間がしでかしたせいでのこともあるようです。

大変な活動をしている友人に、以前聞いたことがあります。
そんな状況下では、援助する側も同じようにしんどいのではないのかと。
すると友人は、どこへ行く時も必ずサッカーボールを1つ持って行くと言っていました。
ちょっとしたスペースを見つけて、援助活動の合間に、仲間同士でサッカーボールを蹴るのだそうです。
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すると、大抵現地の子どもたちが参加したがるので、一緒に遊ぶと言うのです。
そのうちそれを見ていた現地の大人たちから応援の声が上がる。
やがてそこには笑顔が溢れ、歓声が響く。
それまではそこにあったはずの日常が蘇るのだそうです。
だからといって、過酷な状況が激変するわけではないのですが、少しの間だけでも笑ったり、喜んだりすると、その場の空気が明らかに柔らかくなるのだと友人は断言していました。
そしてこのひと時があるから、こっちも乗り越えられると。

その友人から見せて貰う写真の中には、悲惨な現実だけじゃなく、サッカーボールを抱えて楽しそうに笑う子どもたちの姿も。
それは未来を信じさせてくれる笑顔です。

験担ぎ

  • 2016年04月21日

験担ぎをするのはスポーツ選手だけではないようで。
様々な験担ぎをする友人もちらほら。
「日曜日には爪を切らない」という験担ぎをする友人がいます。
なんでも日曜日に爪を切ったら、よくないことが起こったそうで。
それはどんなよくないことだったのかと尋ねると、「それは覚えていない」とのこと。
あまりに昔で、一体自分にどんなよくないことが起こったのかは覚えてはいないが、日曜日に爪を切らないと決め、それを20年ぐらい守り続けていると言います。
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財布を毎年春に買い替える友人もいます。
ただの飽き性ではなく、ほかのモノは何年も大事に使うのですが、財布だけは年に1度買い替えた方がいいと、どこかで誰かが言っていたそうで、それを信じているそうです。
この「春」は「張る」と掛けてあって、財布にお札が大量に入った状態の「張る」ようになるよう「春」に買うといいとの根拠になっているそうで。
シャレかい。
とのツッコミがあろうかと思います。
当然私もツッコミましたが、真面目な顔で「そうそう、シャレ」と頷く友人がちょっと心配になりました。

カルガモの親子がどこかの通りを渡り、無事に池に到着できるかが話題になったことがありました。
同僚の男性が、無事に渡れる日まで肉断ちをしているとの噂を耳にした時の、私の驚きったら。
それは験担ぎの範囲なのかとの疑問もあろうかとは思いますが。
その男性に「どうして肉断ちを?」と聞くと、「僕が肉を食べないと、いつも幸せなことが起こるから」と回答が。
ん?
「じゃあ、ベジタリアンなんですか?」と重ねて尋ねると、「いや、肉は好きでよく食べる」と言うので、「幸せになるとわかっているのに、肉を止められないんですか?」と確認すると、「そうなんだよね」と彼は答えました。
でもカルガモの親子のためには肉断ちができるそうで。
もうなにがなんだか。
験担ぎってそもそもなんだっけと、考えさせられました。

そういう私はどんな験担ぎがあるかというと・・・ない。
ちっちゃいことならあるんじゃなかろうかと必死で考えてみましたが、見当たりません。
自分で決めた験担ぎに振り回されている様子の人を見ると、大変だなぁと思いますが、そうしたものがないというのも、なんだか人生の可笑しさを味わっていないようで寂しい気もします。

ベッドで本を

  • 2016年04月18日

OL時代、同僚が1冊の本を貸してくれました。
お勧めだと言って。
頼んでもいないのに。
これがとんでもないことになろうとは、借りた時にはまったくわかっていませんでしたから「サンキュー」なんて極楽にお礼を言ったりしていました。
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ベッドに入り、寝る前にちょっとだけ読んでみようかとその本を開くと・・・サイコものの小説でした。
私は怖がりなので、小説は勿論映画やテレビドラマなども、こういった類のものは避けて通るようにしていました。
なのに、本を読み始めてしまったのです。
主人公は男性で、女性に監禁されてしまいます。
この女性が次になにをしでかすかがまったく予想できない。
それが恐ろしくてしょうがない。
だからもう本を置いて眠ってしまおうと思うのですが、目を瞑れば、その女性が私を襲ってくる映像が浮かんでしまいます。
物語が少し落ち着くまで読んで、ドキドキが治まってから寝ようと決めてページを捲るのですが、これが全然落ち着かない。
スリルがずっと続く。

主人公が監禁されている女性の自宅に、なにも知らない人がやって来るシーンが出てきました。
主人公は限られた条件の中、必死でその人物に自分の存在を知らせ、助け出して貰おうとします。
もし失敗すれば、その後女性からさらに酷いことをされるとわかっていても、それが最後の頼みの綱と思い、行動を起こすのです。
早く眠りたい私は、主人公と一緒にドキドキしながら「気付いてくれー」と心の中で叫び続けます。
「ほらほら、早く、あとちょっと」と主人公に声援を送ったりもして、アドレナリン大放出。
で、あとちょっとのところで失敗。
がっかりの気持ちがハンパない。
これに成功したら本を閉じ、眠れると思ったのに。

結局本を最後まで読み切りました。
その時午前7時。
もう出勤の準備を始める時間になっていました。
完徹です。
学生時代試験前だって完徹なんてしたことのなかった私が、とんだ目に遭いました。
出勤し、本を貸してくれた同僚に「この目の下のクマを見てよ。一睡もせずに読むはめになったじゃないの。こういう類の本だって事前に教えてちょうだいよ」と文句。
同僚は「ひゃひゃひゃ」とウケていました。

こういう悪ふざけはやめてくれと思う一方、この作家の凄さに改めて驚嘆します。
本を閉じさせないほどの迫力と、スピーディーな展開。
夢中にさせる手腕と描写のリアル感。
こんな風に読者のハートをぐっと掴んで離さない作品を書けるようになりたいと思っています。


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