文庫を出す時

  • 2016年06月23日


作家稼業の中で1番しんどいのは、文庫を出すための作業です。
3、4年前に単行本として出した小説を、文庫という形態に変更して出すためには、改めて自分の原稿を読み直さなくてはなりません。
これがメンタルにくる。
書いた時は最善だと思って使った言葉、表現でも、3、4年後に読み直してみれば、未熟さが目に付く。
なぜこういうシーンにしたんだろうと、物語の構成への不満も。
ああすれば良かった、こうすれば・・・と後悔と自分への失望感でいっぱいに。
へこみますし、すべてを書き直したくなります。
探さないでくださいと置手紙でもして、旅に出たいところです。

が、無理矢理考え方をポジティブ方向へと動かします。
確かに未熟ではあっても、この時にしか書けなかった物語だったんだと、肯定的に考えるように仕向けます。
そうしてなんとか文庫という形で発表させていただきます。

文庫「我慢ならない女」も、そうやって完成させました。
「嫌な女」から始まった女シリーズの第2弾です。

「嫌な女」は25日から映画の公開が始まります。
この「嫌な女」はNHKBSドラマとして放送され、そこには映画「嫌な女」の監督をされた黒木瞳さんが、徹子役で出演されています。
こちらのDVDは24日に発売です。

文庫、映画、DVDと様々な入口がありますので、興味のあるところから入っていただき、そこから次へと移っていって、それぞれを楽しんでいただければと思います。
同じ小説を基にしていても、アプローチの仕方で全然味わいの違う作品になるというのが面白いですね。
「我慢ならない女」ではひろ江と明子の物語が、「嫌な女」では徹子と夏子の物語が展開されます。
どちらも長い年月に亘る関係性を描いています。
人生を丸ごと描くというなかなか大変なトライをした作品でもあります。
ぜひ味わってみてください。

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