ディスコ

  • 2018年05月17日

友人A君の奥さん、B子は慎み深い女性。
夫婦主催のホームパーティーでのB子は、全員に気を配り黒子に徹する。
優秀な中居さんといった感じ。
こうした集まりでB子はほとんど自分の意見を言わない。
聞き役に徹し、その瞳は常にテーブルのグラスや皿に向けられている。
空になっていないか、料理は足りているかといったことに注視している模様。
誰かがB子に質問しても「さぁ、どうなのかしら?」と自分では答えず、A君に問いをそのまま投げることで、回答権を譲る。
常に夫をたてて一歩下がった位置にいる女性。
絶滅したと思っていましたが、まだ生き残っていたのです。

先日行われた食事会にA君が参加していました。
その日B子さんはいませんでした。
昔話が出た時に「そういえば久しぶりにディスコに行ったんだよ」とA君が言い出しました。
行ったのはクラブではなくて、昔のディスコを復活させたようなお店だったそうです。

若い頃行っていたディスコで流れていた曲ばかりがかかり、お客さんたちもおじさんとおばさんばかりだったとか。
懐かしくて楽しかったそうですが、数曲踊ると身体が悲鳴を上げるので、しばしば休憩しなくてはならず、現実を感じたと語っていました。

「ほら、その時の写真」と、見たいと言ってもいないのに、A君がスマホの写真を見せてきました。
しょうがないので写真を覗くと・・・A君の隣に派手な感じの女性が。
水色のアイシャドーを瞼にべったり塗ったその女性を、どこかで見たような気がする。
A君が指で画面を撫でると次の写真に。
そちらには二人の全身姿が。
A君の隣にいる女性は前の写真と同じ人で、ボディコンのコスプレをしている。
下着が見えるんじゃないかぐらいのミニスカートで、身体のラインがはっきりと出ている。
次の写真では、そのコスプレの女性が一人でお立ち台で踊っている姿が。
三十秒ぐらい見つめてから「これって、もしかしてB子さん?」と私は尋ねました。
「そうだよ」と当たり前だといった顔でA君が頷きます。
思わずスマホを奪い取り、改めてB子のコスプレを観察しました。
「B子さんには双子の妹がいるとかってオチじゃないの?」と聞くと、「なんだ、それ」とA君は笑いました。

いつものB子さんっぽくないと私が指摘すると、この日は特別で昔を懐かしがろうという企画に合わせてくれただけだと、A君はなんでもないことかのように言ってのけました。
果たしてそうでしょうか?

その写真の中のB子はとびっきりの笑顔でした。
そしてそれは、それまで見たことがないものでした。
心から楽しんでいるといった風に見えたのです。
もしかするとこっちがB子のホントーの姿なのではないかと、勘繰りたくなろうってもんです。
だとするなら普段のB子は演じている?
それとも両方の面をもっている?
私はB子のごく一部分だけしか見ていなかったということでしょうかね。
いずれにしても、人は奥深く謎に満ちていると改めて思ったのでした。

ブログ内検索

  • アーカイブ


  • Copyright© 2011-2024 Nozomi Katsura All rights reserved. No reproduction and republication without written permission.

    error: Content is protected !!
    Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.