工事現場で
- 2021年08月05日
近所に年季の入った商店がありました。
独特な選択眼で集められた商品が並んでいました。
アイス、菓子パン、カップラーメン、煙草、布の漂白剤、雑巾・・・どういった固定客がいる店なのか、私にはわかりませんでした。
ある日、その店が白い布で囲われました。
解体工事をすると掲示されていました。
跡地にはマンションが建つらしい。
その前を通る度に布の向こうを透かし見ます。
解体工事は順調に進んでいるようでした。
そしてある日、建物はなくなり真っ平に。
50平米ぐらいでしょうか。
想像していたよりも狭かったな、なんて思ったりして。
真っ平になった途端、作業員の姿が見えなくなりました。
なんで中断してるんだろう。
資材の手配に手違いがあったとか、人手が足りないとか、資金がショートしたとか?
勝手にその理由を想像していました。
それから1ヵ月ほどしたある日。
郵便受けにA4の紙が1枚入っていました。
その紙に書かれたタイトルは「埋蔵文化財発掘調査について」。
ん?
そこに描かれた地図の中の、斜線を引かれた場所をじっと見つめると・・・作業が中断していたあの工事現場じゃないですか。
おお。
マンションを建てようと思ってほじくったら、なんか文化的に価値のあるモノが見つかっちゃった・・・ということだったようです。
しばらくの間発掘調査をするので、騒音などで迷惑を掛けるかもしれませんが、よろしくねといった内容の案内でした。
そんな理由だったとは。
発掘調査によって、恐らく工期は大幅に遅れるでしょう。
オーナーのため息が聞こえてくるようです。
ただの近所の者である私は、工期がどれだけ遅れても財布は痛まないので、どんなものが埋蔵されていたのかに興味が。
白い布越しに作業の様子を眺めると・・・3台のカメラが1カ所に向いています。
どうやら左奥のその一角に文化財があった模様。
なに、それ。
布越しではどんな状態なのか見通せません。
出来ることならば調査の結果を教えて欲しい。
結果をまた郵便受けに入れてくれたらいいのに。
そう思いながら、毎日のように白い布の前を行ったり来たりしています。