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手の中の天秤

手の中の天秤

  エピソード  

仇討ちの制度に、心惹かれた時期がありました。
究極の平等ではないかと思えたのです。
でも、ある日、気が付きました。
仇討ちをした後、果たして爽快感や達成感を得られるのだろうかと。
大切な人は生き返らないという現実は、変わりません。
大切な人を突然、理不尽に奪われた怒り、哀しみ。
そして、喪失感を乗り越えるには、なにが必要なのかと考えました。
加害者の反省の言葉でしょうか?
わかりません。
答えが出ないまま、この小説を書き始めました。

執筆途中、あの、3.11が起きました。
東京の仕事場も大きく揺れました。
恐怖でパニックを起こしながらも、原稿だけは守らなければと、保存していたUSBメモリを必死で摑みました。
揺れが治まり、テレビを付けると、そこには信じられない光景と情報が。
なにもできないという無力感と、圧倒的な絶望に押しつぶされそうでした。
しばらく、執筆をすることができませんでした。

哀しみと怒りと、無念さの入り混じった混乱の日々を過ごしていた時、テレビで被災者の方たちの姿を目にしました。
そこには家族を失った人たちが映っていました。
訥々と語られる家族の話。
それを聞いているうちに、はっきりとわかったことがありました。
哀しさが、減ることはないこと。
その哀しさを抱えたまま、それでも、今日を生きていくしかないのだということ。
それが、生きるということだということ。
そうやって生きていくなかで、再び笑える日がくることを信じるしかないということも。

執筆を再開し出すと、いつしか、「希望」がありますようにと、願いながら書いていました。
そうして、書き始めた時には、予想していなかった方向へと物語は進みました。
小さな灯りを、見つけて欲しいという気持ちのせいだった気がしています。

手の中の天秤
単行本[中国語版]
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