ヘアブラシの埃

  • 2018年10月18日

ヘアブラシの歯の根元に埃が溜まる。
何故か溜まる。
他の人はどうだか知りませんが私は溜まる。

これを取るには根気がいる。
水洗いしたって落ちないから。
爪楊枝を歯の根元にあて引っかけ上げるようにして、一本ずつ埃を取っていく。

ある日もう嫌だと思う。
でもなんていう単語で検索したら、埃が堪らないヘアブラシと出合えるのかわからない。
どうしたものかと思いながら数日が過ぎる。

別の買い物をしていた際、ページの下部に出て来た「あなたにお勧めの品」という画像に目が留まる。
それは櫛の画像。
画像の下には静電気を防止する櫛だとの文字が。
思わずその画像をクリックしてみると・・・表面の塗装加工によって静電気が起きにくいと書いてある。

そもそもヘアブラシの歯の根元に埃が溜まるのは、静電気のせいだったのでは? と気付く。
更に説明書きを読んでいくと「表面がすべすべ」→「摩擦を生みにくい」→「髪を傷めない」といったロジックのようです。

歯の根元に溜まる埃に関しては全く触れていないのが、少し心配ではありますが、静電気が起きにくいのであれば、埃も溜まり難いはずなので、トライしてみる価値はあると判断。
購入したのがこちらです。

薄くてピカピカと光っているせいなのか、高級感はなく「場末にある、マダムが趣味でやっている店に何年も置かれている品」といった印象を受ける。

ところがところが。
埃が全然歯の根元に溜まらない。
これは私が望んでいた品だったと確信する。
埃が堪らないということは、静電気が抑えられているということ。
だから多分髪を傷めていないのでしょう。
もう私は爪楊枝で埃を掻き出す作業から解放されたのです。
有り難う、櫛。

人生の中でヘアブラシの歯の根元の埃を掻き出す時間ほど、無駄な時間はないと思っていたので、すっきりした気分でございます。

ハガキが

  • 2018年10月15日

大学生の頃の話。
担任の先生からハガキが届きました。
ところが読めない。
草書の上達筆過ぎて、なんて書いてあるのかわからない。
取り敢えず、なんらかの返事を必要としているのかを知りたい。

親に見せれば一発で解決するかもしれないのですが、よくない内容だった場合、困った事態になる可能性も。

そこでバイト先で一番年上だと思われる人に見て貰うことに。
眼鏡を掛けて長い時間ハガキを見ているから、どんだけ小難しい内容が書かれているのかと思いながら待っていると・・・一つの文字を指差し「これは『の』じゃないかな」と言いました。
くるんと円を描くそれは、私も「の」じゃないかと思ってましたから。

結局その人は「の」を指摘しただけ。
他にそうした文字を読めそうな大人を探そうにも、思い当たらない。

私とどっこいどっこいの学力と思われる、大学の友人らに見せてみましたが、予想通り皆読めない。
困ったなと思っていた時友人の1人が言いました。
「あそこら辺の人たちなら読めそうじゃない?」と。
彼女が指差したのは、授業の時いつも最前列に座っている真面目な学生たち。
その真摯に勉学に励む姿は神々しいぐらいで、私なんぞは、近くを通る時には息を止めてしまうぐらい。

確かにあの人たちなら読めるかもしれない。
そう思った私は意を決して話し掛け、依頼してみました。
するとその中の一人がさらっと読んでくれます。
すっげぇ。

それは先生からのお礼の言葉が書かれたハガキだったと判明。
私はすっかり忘れていたのですが、その先生とたまたま帰りの電車で一緒になり、少し話をしました。
その時に先生から質問が出たのですが、私には情報がなく答えられませんでした。
しかしスルーはマズいだろうと思い、後日調べた結果を先生に伝えたという一件があったのでした。
それについて先生が、わざわざ調べてくれて有り難うとハガキを送ってきたという顛末。

なーんだ、そんなことか。
とほっとして、読んでくれたクラスメイトにお礼を言うと、物凄く不思議そうな顔で「先生と友達なの?」と聞いてきました。
「そんなわけないじゃん。たまたま電車で一緒になって、少し話をしただけだよ」と説明するも、「なんか凄いね」と言われました。
なにが凄いのか全然わかりませんでしたが、それがきっかけで、それまで全く接点のなかった勉学に勤しむ彼女たちと、挨拶を交わす仲に。

そうした真面目な学生たちと挨拶を交わすようになった私は、たったそれだけで、不真面目な友人たちから高評価を受けるようになりました。

学生の頃の友人関係を今になって振り返ると、少し滑稽さがあったなと思う一方で、とても懐かしい気持ちになります。

小説を書く時、登場人物たちの友人関係を描くシーンはとても重要です。
どんな友人がいるのか、その人とどういう関係性なのかを描くことによって、その人物の人間性がはっきりしますし、リアルさが増すと思っています。

新刊「僕は金(きん)になる」の中でも主人公、守の友人関係を描くシーンがあります。
嘘を吐くのが上手な友人に憧れを覚える守。
それは守自身が嘘を吐くのがとても下手だということでもあります。
守を描くのにとても重要なシーンだったと思っています。

歯ブラシを

  • 2018年10月11日

ネットショップで歯ブラシを買おうと思ったら、いつも使用していたのが販売終了になっていました。
検索すると山のように歯ブラシが出てくる。
とても決められないので、使用している歯磨き粉と同じブランドの歯ブラシにすることに。
で、この時にいつものようによく考えずに購入。

届いた歯ブラシに歯磨き粉を付けて口に。
パッケージに超コンパクトと謳っていただけあって、とても小さくて薄くて、奥までするっと届く。
しかし。
あたりが硬い。
そういえばサイトには同じ歯ブラシで「普通」と「柔らかめ」という2種類があったことを思い出す。
なにも考えず「普通」でいいだろうと、こちらを選択してしまいました。
「普通」がこんなに硬いとは思わなかった。
これまで使っていたのは「柔らかめ」だったんですね、気付いていませんでしたが。

更に問題なのは毛先が歯間にまったく入らないこと。
磨き終わっても歯間にまだなにか残っている感が甚だしい。

歯ブラシにもいろんなタイプのものがあるのだと知る2018年秋。

そこで今度は「歯ブラシ」「柔らか」「コンパクト」「先細」で検索。
それでも30個以上出てきてしまいましたが、今度は慎重に商品の横に書いてある文章を読み、1つを選択。
3本セットや6本セットの方がお得なのですが、使ってみたら「これが柔らかいっていうんなら、普通ってのは石かよ」と暴れる自分の姿がちらちら浮かぶので、1本のみ購入。

届いた品はさほど「コンパクト」には見えず、口に入れてみても奥まで届き易いといった感覚なし。
でもあたりは柔らかいし歯間に毛先が入るので、磨き終わった後にはすっきりする。
ま、この辺で手を打っておくかといった品。
多分次に買う時もこれを選ぶと思います。

そして手元に残った6本の硬い歯ブラシをどうするかとの難題が。
お得感に心を惹かれて6本セットで買っていたのです。
がしっと摑んだ歯ブラシの束をゴミ箱の上にまで運んだのですが、勿体ないとの思いが胸に溢れる。

服の場合「今は着られないけれど、そのうち痩せて、着られるようになるから」といった理由で、捨てずに放置というパターンがあります。
が、歯ブラシの場合「今はあたりが硬いけれど、そのうち歯が強くなって、硬いのが好きになるから」といったことにはならない気がする。

そんな時閃きました。
そうだ。掃除する時に使えばいいんだと。
具体的にどこを掃除する時に使うのかといったビジョンは描けないけれど、雑誌の掃除特集でマイスターが歯ブラシを使っていた気がするもの。

と、放置する理由を思い付きにやり。
掃除用品を入れている引き出しに歯ブラシを仕舞いました。
きっといつか、この歯ブラシを使って掃除をする日が来る。
多分来る。

年を重ねるということ

  • 2018年10月08日

久しぶりに会った友人A子。
ダイエットしていると言う。
「そんなことが必要には見えないよ」と私が言うと、「いやいや。お腹周りがヤバいんだ」と答えました。
A子は週に5日は自宅近くのジムへ行き、泳いだり、ランニングマシンの上で走ったり、ヨガをやったりしているそう。
体重も体脂肪も減ったのだけれど、お腹周りについた脂肪はまったく減らないと嘆く。

ウエストがゴムの服しか着られなくなったと、A子は言います。
ブラウスをスカートにインして着た最後の日を、思い出せないとも。

どうしてかなぁと言いながらA子はランチを平らげ、二軒目の店ではケーキを注文。
「そこじゃない?」と指摘するのが友情だろうかと悩む私。
結局「気にすることないよ」と無難な言葉を向けるに止めました。

そういう私はどうかといえば、胴回りや体重に変化を感じてはいません。
でも久しぶりに会った友人から「縮んだ?」とよく言われます。
「痩せた?」ではなく「縮んだ?」と言われるあたりが、年齢でしょうね。

年を重ねていくにつれ、見かけだけでなく様々なものが変わっていきます。
それをマイナスと捉えず、それ自体を楽しめるようになりたいと思います。

小説を書く時難しいのは、こうした時間の経過によって生じる変化です。
同じ登場人物でもものの見方や、受け取り方が変わっていきます。
なにか大きな出来事によって、性格が激変するというのではなく、少しずつ少しずつ時を重ねる中で緩やかに変化していくさま。
これを読者に違和感なく、でも変化を感じて貰えるように描くのが難しい。
いくつになっても変わらないという部分もあるので、登場人物をどのように老けさせていくのかというのは、作家にとってはかなりのチャレンジになります。

私は長い期間登場人物たちを追う作品が、結構多い方かもしれません。
「嫌な女」「我慢ならない女」では、結構長い期間を描いていますし、新作「僕は金(きん)になる」でも40年に亘る物語になっています。

登場人物たちがどんな風に年を重ねていくのか。
それを見守ることで、人生の味わい深さを感じて貰えたら嬉しいのですが。


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