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この会社、後継者不在につき

きっかけは新聞記事でした。
事業承継問題がこのまま進んでいくと、廃業が急増して、約６５０万人の雇用が失われるとの試算があるというものでした。

６５０万人の失業・・・インパクトのある数字です。
この問題を耳にしたのは、初めてではありませんでした。
でも真剣には考えずスルーしていました。
今回はその数字の衝撃を受けて、調べてみることに。
すると驚くようなデータに出くわします。

７０代の経営者の約４０％に後継者がいないとか、２０２０年に休廃業・解散した企業５万件のうち、その６割は黒字だったとか、廃業の理由の３割が後継者難だったとか・・・。

なんとも勿体ない話です。
黒字なのに後継者がいないために会社をたたむなんて。

国もこのマズい状態には危機感をもっているようで、予算を付けています。
その予算で「事業承継・引継ぎ支援センター」が各都道府県に設置され、サポート体制が用意されました。

今、この問題を抱えている多くの企業には、働く人たちがいます。
彼らはどんな思いでいるのでしょうか。
それぞれが置かれている立場によって、見えている景色も、危機感も違うでしょう。
どんな不安や不満を抱えているのか・・・書いてみたいと思いました。

そこで検索窓に「事業承継」と「本」と入力してみました。
物凄い数の本が出てきました。
タイトルから推測しただけですが、どれも実用書のようです。
困っている人はたくさんいるはずなので、そういう方たち向けの本かもしれません。

私は小説家。
事業承継を軸にした物語を書くことにしました。
登場人物たちに命を吹き込み、彼らが自由に動き回るのを、見守るような感覚で執筆を行いました。

頑張って大きくしてきた会社を、誰かに譲るのは寂しいことです。
現役から引退する訳ですからね。
その寂しさに、そっと寄りそうような小説を書いたつもりです。
是非じっくりとご堪能ください。