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諦めない女

諦めない女

  エピソード  

気が付いたら「女シリーズ」と呼ばれるようになっていました。
発端は「嫌な女」という作品でした。
文芸誌「小説宝石」に連載中には「ずっとずっと向日葵」と別のタイトルが付けられていました。
単行本の発売が12月に決まり、この時期に向日葵は如何なものかと物言いが付き、変更することになりました。
皆でうんうんと頭を捻って、生み出されたのが「嫌な女」でした。

次作では打ち合わせの段階でも、執筆中もタイトルに関する話し合いはありませんでした。
原稿が上がった段階で、タイトルの話し合いがもたれました。
複数のタイトル案を皆であれこれ検討する会議中のこと。
誰かが言ったのです。
「女」と付けた方がいいんですかね? と。
あぁ、そうかもね。
と、これぐらいのノリ。
たまたま主人公が女性だったので、確かに女と付けた方がいいのかもしれないと、会議の流れが一気に変わりました。
この流れの中で生まれたのが「我慢ならない女」というタイトルです。
この発言がなければ、別のタイトルになっていたことでしょう。

そのうち「フツー3部作じゃないのか?」と誰かが言い出し、「そうなの? そういうものなの?」と尋ねる私に、編集者は「やっぱりそうなんじゃないですかね」と答えました。
なんだかよくわからないうちに、女シリーズは3部作ということになっていました。

女性の物語を書くならば、母と娘の物語にしようと考えました。
案を練りプロットに落とし込み、編集者に見せると「お書きになるのは大変でしょうが、完成したらとても面白いものになるのではないでしょうか」との感想が。
この時私は「お書きになるのは大変でしょうが」の部分をスルーしてしまっていました。
いざ書き始めると、とんでもなく大変なことに気が付きました。
いつもプロットを作る時は、どうしたら物語として面白くなるかという視点しかなく、それを私に書けるのかといった視点がないのです。
そして書き始めてようやく、やべっと気付く。
気付くのが遅過ぎますね。

様々なトライをしている作品のため、常に針に糸をさすような繊細な筋運びが求められ、これは完成するのだろうかと何度も不安になりました。
そのせいでしょうか、約束した時期に作品は仕上がりませんでした。
「いつ頃になりそうですか?」と問われ、正直に「さぁ」と答えてはいけないことは、社会人として知っています。
だからといって、具体的に〇月×日までになどと言っては、自分の首を絞めることになると知ってもいます。
そこでどうして遅れているのかといった理由と、もうすぐだの、近いうちにだの、必ずやだのといった、はっきりしない言葉を羅列したメールを編集者に送りました。
これを毎月繰り返すうちに、言い訳の在庫が切れてしまいました。
言い訳を捻り出せない。
こうなるとただひたすら謝るしかない。
私のメールは、謝罪の言葉と自分を罵倒する言葉が並ぶものになりました。

気が付けば1年以上の月日が流れていました。
様々なトライと、色々な思いを込めて、たくさんの時間を重ねて書いた作品です。
今はこの作品を書き上げることができて、ほっとしています。

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