これまでどれだけの美容院を転々としたか。
あなたはずっと同じ美容院に通っていますか?
それとも毎回違うところ?
小学生の頃は、自宅から一番近くにある美容院に行っていました。
近所の子どもも大人も皆、そこに行く。
だからなのか、近所の住民たちはほぼ同じ髪型でした。
中学生になると、ちょっとこじゃれた美容院へ15分ぐらい歩いて行くように。
一番近い商店街ではなく、大きな商店街まで歩き、そこに店を構える美容院に。
たったそれだけのことなのに、母親からは「お年頃ね」などと冷やかされました。

高校生になると、電車で十分ほどの大きな街にある美容院に鞍替え。
成長して行動範囲が広がるにつれて、美容院を見つけるエリアも広がりました。
大学生になると、雑誌で見つけたオシャレな美容院を予約。
わざわざ銀座で髪を切って貰っていました。
私の美容院に傾ける情熱は、この時点がピーク。
やがてどこでも同じという結論に辿り着き、美容院選びの視点が変わりました。
まず便利な場所にあること。
自宅か職場から徒歩10分以内で、予約方法が簡単で、待たされず、手早くやってくれて、料金が安いところ。
この条件に合う美容院を転々としてきました。
そして遂に私にとっての終着点を発見。
それは自分でカットするという方法。
この便利さを知ってからはもう戻れない。
このままセルフカット道を突き進んでいく所存です。
新装版となって刊行された小説「嫌な女」には、美容院の店主が登場します。
主人公の一人である夏子と、トラブルになります。
困った夏子は、遠戚である弁護士の徹子に連絡。
解決を委ねます。
夏子の主張と、美容院の店主の主張には大きな違いが。
真相を知るために徹子は調べ始めます。
そこで見えてきたものは・・・本書でご確認ください。
本日は敬老の日。
人生の先輩を敬っていますか?
人生の後輩から敬われていますか?
すべての人は平等に年を重ねていきます。
これをどう捉えていますか?
抗っていますか?
それとも受け入れていますか?
私は楽しみたいなと思っています。
「こんなこと昔はなかった」と驚くこともしばしばですが、加齢を今、経験中なのだと考え、しょうがないかぁと笑って過ごすようにしています。
新装版文庫「嫌な女」に登場する人物たちも、小説の中で年を重ねていきます。
弁護士の徹子は、若い時には甘く見られないよう、実年齢より年上に見せようとしていました。
月日を重ねて、そんな工夫をする必要がなくなります。
加齢を受け入れているような徹子ですが、これだけは譲れないというラインが。
それが靴。
詳細は小説で。
一方の夏子は抗う。
必死に若作りをします。
はたから見ていると痛々しいぐらいの悪あがき。
そんな夏子ですが、実は人一倍自分の年齢をシビアに見る目ももっている。
なにせ夏子は男たちを騙して、小金を巻き上げなくてはいけない。
若い頃と同じ手法では通じないことは、身をもって知っているのですから。

だから年齢と時代に合わせて、騙す手法を変えていきます。
まるで老舗の優良企業のよう。
根幹は変えずに、時代に合わせてチューニングし、商品の売り方を変えていくという手法を取っているのです。
やり手ともいえる夏子ですが、残念ながら詰めが甘い。
しばしばトラブルに陥ってしまう。
年を重ねても全然変わらない部分と、年を重ねて変わった部分、どちらもあるのが人間。
徹子と夏子の年の重ね方を、味わってみてください。
新装版文庫「嫌な女」が発売になりました。
今回新装版を発売するにあたり、改めて原稿をチェックしました。
すでに発表した小説を改めて読む作業は、こっぱずかしい。
当時はこんな風に表現したのかとか、ここでその展開にしたのかとか、昔の自分に驚いたりもします。
また数年しか経っていないのに、遠い昔の自分の心の内を見せられているような感覚も味わいます。
この「嫌な女」を執筆したのは15年以上前。
だからでしょうか。
普段より恥ずかしさは感じませんでした。
どちらかというと、同窓会で久しぶりに友と会ったような感覚でした。
元気だった?
変わらないねぇ。
今、なにしてるの?
と、登場人物たちに尋ねたいような気持ち。
だから今回の原稿チェックは、懐かしい人と久しぶりに再会出来た楽しい時間となりました。

この小説にはたくさんの人物が登場します。
「主人公である徹子と夏子以外で、好きな登場人物は?」と、取材で何度か聞かれました。
このような時に私は「芸者さん」と答えました。
すると取材者は大抵「芸者さん?」と首を傾げます。
1シーンにしか登場しない脇役なので、覚えていないのも当然。
多くの読者は脇役として、さらっと流してしまうでしょう。
でも私は彼女にとても心惹かれているのです。
この芸者さんは銜えタバコをしながらスクワットをして、夏子への思いを語ります。
この健康に気を遣っているんだか、いないんだか分からない矛盾だらけの人。
こういう人に私は強烈に惹かれます。
人にはいろんな面があって、相反することも同時に抱えています。
そういうおかしなところを、愛おしいと思うのです。
芸者さん以外にも、個性的で魅力的な人物がたくさん登場するのが「嫌な女」です。
ぜひお楽しみください。
あなたが思う「嫌な女」とはどんな人物ですか?
「悪女」ではなく、「嫌な女」とは。
そうだなぁと考え始めたあなた。
特定の誰かを思い浮かべたりしましたか?
結構身近にいそうな「嫌な女」。
絶対に友達にならないと決めている?
半径10メートル以内には、近づかないようにしている?
フランス映画にたくさん出てくる?
小説「嫌な女」には夏子という女性が登場します。
夏子は嘘吐きで、自己中で、お近づきにはなりたくないタイプ。
が、男たちを虜にする女でもある。
性悪女なのに男たちからチヤホヤされるから、ますます嫌な女度を上げている。
真面目に生きている女たちから見たら天敵です。
ところが。
嫌な女の夏子の人生を読んでいくうちに、違う面に気付いていく。
そんな小説が「嫌な女」です。
どうぞ、夏子の生き様を味わってみてください。
新装版文庫「嫌な女」は9月10日に発売になります。
お住まいの地域によって、また購入方法によって、発売時期は前後しますので、予めご了承ください。
「嫌な女」の新装版を皮切りに3ヵ月連続で、文庫が発売になります。
20年以上作家業をしていますが、このような連続刊行は初めてのこと。

原稿のチェックに追われる中で、装幀の確認や、HP等の更新作業の確認など、細々とした業務が続きました。
頭がバグってしまい、これはなんの原稿だっけ? てなことにならないように、音楽の力を借りました。
1つの作品に1つのテーマ音楽を決めています。
それを聞くことで、その作品世界にすんなり入れるようになります。
このパブロフの犬作戦によって、作品世界がまじることなく、それぞれ独立した世界観になっています。
まずは第一弾の新装版「嫌な女」の発売まで、いましばらくお待ちください。