執筆中は、登場人物たちを演じているという感覚になっています。
この作品では、登場人物たちと少し距離を取るため、演じるのではなく、演出家になったような心持ちで、執筆することにしました。
言うは易く行うは難し。
書いていると、どうしても登場人物の心情に前のめりになってしまいます。これを無理矢理引きはがすようにして、演出家の立場に自分を置くのは、とてもしんどいことでした。
年齢もライフスタイルも様々な四人の女性たちを、どこか1ヵ所ですれ違うようにさせたいという考えがありました。
どこにしようかと悩みました。
カフェやバーではない場所を探しました。
ふと、ある駅ビルで見かけた、肩揉み屋が頭に浮かびました。
その店は、エスカレーターのすぐ横にありました。カーテン一枚で仕切られた簡易式の店内では、客は椅子に座った状態で、肩揉みサービスを受けていました。10分単位の料金設定になっているようでした。
何度か前を通りかかりましたが、いつも混んでいて、待ち時間の案内が出ている日もありました。
ああいう場所にある、肩揉み屋なら、様々なライフスタイルの女性たちが利用しているだろうと考えました。
ですが、肩揉み屋では、客はドーナツ状の枕に顔をすっぽりと埋めた状態で、サービスを受けます。施術して貰いながら、スタッフと会話ができるような格好ではないのです。
会話ができないと、小説の進行上、困ったことになります。
どうしたもんかと考えている時、肩ではなく足裏を揉んでもらえばいいのだと気が付きました。
こうして、設定が決まりました。