2003年に発表した、デビュー作です。
当時はフリーライターをしていました。主に週刊情報雑誌から仕事を貰っていたので、締め切りがかなりタイトでした。午前十時からラーメン屋を六軒取材して回り、夕方自宅に戻って執筆。締め切りは、その日の夜中の二時。これが毎日続きます。
小説を書く時間は、睡眠時間を削ることでしか生みだせませんでした。
原稿をメール送信した後の午前二時から、ひっそりと書き始めます。
睡眠時間が足りないというのもあったでしょう。主人公があまりに可哀想な境遇で、書きながら泣いていたというのもあり、毎晩、頭痛が襲ってきます。しょうがないので、痛み止めの薬を飲みながら、書き続けました。
ふと、冷静に自分を見られる日もやってきます。そんな時には、私はなにをやってるんだろうと、首を捻りました。夜中に、頭痛薬を飲み、泣きながらキーボードを叩く私は、ちょっと壊れかけてるんだろうなぁとも思っていました。
もう、こんなの、止めちゃおうかと、何万回も思いましたが、なんとか書き終えることができました。それは、この主人公を生み出したのは自分なので、この子を見届ける責任が私にはあると思い込んでいたせいかもしれません。
書き終えてみると、誰かに読んで欲しいという気持ちが湧き上がりました。そこで、どこかに応募してみることにしました。色々調べてみると、応募要件に枚数制限というのがあることがわかりました。四百字詰原稿用紙に換算した指定枚数内でなければいけないようでした。私の原稿は八百枚ほど。これは多過ぎるようで、応募先がありませんでした。頭痛薬を飲み、泣きながら書いた原稿を、削ることは、心情としてできません。応募を諦めかけていた時、ネットサーフィン中に、1つの公募情報を見つけました。そこには、枚数制限がないとうたってありました。
読んでもらえるところが、あったと喜び、早速応募。これが、デビュー作「死日記」です。