デスクにはネタ帳が置いてあります。
思い付くと、そこに書きつけるようにしています。
時にはページを遡り、以前書いたアイデアを吟味することがあります。
そしてアイデアを膨らませたり、いじったりして、それをまた書き足していきます。
性格が変わったら幸せになれる?
と、ネタ帳に最初に書いたのがいつだったのか、記憶がはっきりません。
その後、その下に「ならない」と自らの答えを書き足したのが、いつだったのかも覚えていません。
このメモは「でも幸せになれるかもしれないと考えたら?」と続きます。
あの時ああしていたら・・・と過去の自分の決断を後悔したことがある人は? と書いた文字の下には、「いる」と記しています。
種だったアイデアに水を与え、肥料をやり、光を当てる角度を試行錯誤している様子が見てとれます。
好きな作家の一人が、星新一さんです。
奇抜な設定や世界を用意するのが、星さんの作品の特徴でしょうか。
ですが、そうした設定を描くのが星さんの目的ではなく、あくまでもそれは小道具のようなものだと私は感じています。
星さんが描くのはあくまでも「人」。
特殊な世界に人を置くことで、欲や弱さや滑稽さといった本質的なものが暴かれるのではないでしょうか。
星さんのショートショートは、その短さ故あっという間に読み終わりますが、ずしんと胸の奥に強烈なものを残すのは、そうした根源的なものに触れているからではないかと思っています。
偉大な作家の足元にも及びませんが、私なりに特殊な設定を用意し、人を描こうとした作品です。
どんな人間になりたいのか、それを突き詰めていった先になにが待っているのか・・・この物語を楽しんでいただけたらと願う次第です。