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エデンの果ての家
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エデンの果ての家

  エピソード  

ジェームス・ディーンが主演した映画「エデンの東」。
とてもとても大好きな映画です。
観る度に号泣してしまう映画でもあります。
ジェームス・ディーンが演じるのは孤独でナイーブな青年キャル。
家族とはすれ違い、傷ついてばかり。
その瞳にはいつも哀しそうな色が浮かんでいます。

この素晴らしい映画「エデンの東」へのオマージュとして小説を書けないかと、長年思っていました。
が、思うは易し行うは難し。
あまりに「エデンの東」への思いが強過ぎて、なかなか形にできずにいました。

編集者と食事中のある日のこと。
なにかの流れからこの映画の話になり、気が付けば私はキャルのことを夢中で喋っていました。
喋っているうちに、ぱっと頭の中に寂しげな横顔の男性の姿が浮かびました。
それはジェームス・ディーンではなく、まったく別の男性の横顔。
あぁ、書ける――。
根拠のない確信が湧き起こり、その勢いのまま編集者にこういう小説はどうだろうかと提案を始めました。
設定はこうで、主人公の年齢はこれぐらいで、仕事は・・・。
次々に浮かんでくるアイデアをそのまま口にし、その声を自分で耳にして、へぇ、そうなんだと確認するような感覚。
物語が自分の中で動き出す時にいつも感じる熱を、この時も全身で感じていました。
ちょっと興奮しているし、新たな登場人物と出逢えた喜びもあります。

こうした勢いのまま一気に書いていく・・・という場合もあるのですが、この作品はそれではちょっとバランスが悪いように思いました。
そこで、パソコン画面の端に、この作品が目指すトーンを付箋に書き、貼っておくことに。
付箋に書いたのは「シャープにクールに、しんしんと」の文字。
執筆中常にこの付箋に目をやり、作品世界全体の静かなトーンから外れないよう注意していました。
こうして肩入れし過ぎそうになる主人公と、距離を一定に保ちながら書き続けるというのは、とても苦しい作業でした。

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