包丁を

  • 2025年06月26日

物の捨て時が分かりません。
経年劣化ですでに役目を果たさなくなっていても、ズルズルと使い続ける傾向が私にはあります。
QOLを下げていると分かっていても、踏ん切りを付けられないのです。

タオル、靴下、Tシャツなどがこれに該当します。
そして包丁も。

買ったのはおよそ30年前。
この間、研いだことなし。

一度研ぐグッズを購入したのですが、刃先をそれに挟んでちょっと動かしたら、とんでもなく嫌な音が発生。
全身に鳥肌が立ちました。
即刻中止。
それで研がずに30年。

今年に入ってからは、キャベツすら切れなくなってしまいました。
トマトをカットするのはもう随分前に諦め、ミニトマトで誤魔化してきましたが、キャベツの代替野菜を思いつけず、さすがに寿命かなと、ようやく買え時を自覚。

ネットで調べてみたら・・・思いの外、安かった。
1万円を超えるだろうと思い込んでいたのですが、5千円以下の商品がたくさん。
そこで4千円ぐらいのオールステンレスの包丁を購入。

届いた包丁で早速キャベツを切ってみると・・・なんかギクシャク。
包丁の使い方が変になっていることに気付きました。

長年切れない包丁を使い続けてきたので、刃を当てたら前後に何度も動かして、切るのをサポートしてきました。
これがもう癖になっている。
同じように動かすと、今度の包丁は切れ味がいいので動かす先から切れていく。
スパスパと切れてはいくのですが、切り口がギザギザに。

あれっ。
包丁はどうやって使うんだっけ? という新社会人が初めて自炊をした時のような疑問が。
押すのか、いや、引くのか?
それとも真っ直ぐ下ろせばいいのか?
この年になって包丁の使い方の動画を検索することになるとは、思ってもいませんでした。

文庫版が発売された「残された人が編む物語」には5つの小説が収められています。
その内の1つ「ヘビメタバンド」には料理好きな人物、涼太が登場します。

涼太は、智裕が大学生の時に組んでいたバンドの仲間。
当時は一人暮らしをしていた涼太のアパートに、バンドメンバーがしょっちゅう集まり、彼の手料理を肴に酒を飲んでいました。

くだらない話で盛り上がり、大きな夢をもっていたあの頃。
間違いなく輝いていた青春時代でした。

バンドを解散してから連絡を取っていなかった涼太を、智裕は捜すことになります。
智裕が涼太の人生を垣間見て、なにを思うのか・・・興味をもたれた方は是非本書をお買い求めください。

昔の写真

  • 2025年06月23日

実家を片付けていた時のこと。
母親の若い頃の写真を発見。

写真の中の母親はとてもファッショナブル。
ちょっと驚きました。

手先が器用な人だったので、自分で作ったのかもしれません。
今でも充分オシャレな服を着て、サングラスなんかしちゃっている。

そういえば、晩年、デイサービスに行くための服を、これにしようか、あれにしようかと時間を掛けて選んでいましたっけ。
母親はファッションが好きだったようです。

文庫「残された人が編む物語」には「幼き日の母」という小説が収められています。
西山静香は自分の幼少時のことを鮮明に覚えています。

母親がどういう服を着ていたかといったことを。
また服をどこから調達していたかも。
それが周囲からどんな風に見られていたかも。

やがて忘れていた記憶も思い出していきます。
そうした記憶の中の自分を振り返り、静香がどんな心境に達するのか。
それを見届けて頂きたい小説です。

実家の片付けをしていた私は、自分の昔の写真も見つけました。
当たり前なのですが「若い」。
顔も身体も真ん丸でパンパン。

いくら10代だからといって、そんな短いスカートをはいて太い足を見せなくても良かっただろうにと、今になって猛反省。

サラサラな髪の写真を見た時には・・・そうか、この頃の私はこんな髪質だったのかと遠い目に。
ストレートヘアもやがて年を重ねてうねり捲り、ペヤングソース焼きそばの麺ぐらいに縮れることなど、当時はまったく想像していませんでした。

時はいろんなものを変える。
でも変わらないこともある。
人の歴史って面白いですね。

社長の背中

  • 2025年06月19日

先週発売になった文庫「残された人が編む物語」をご紹介。
今日はこの本に収載された小説の中から「社長の背中」をピックアップ。

川田剛は以前勤めていた会社の社長、矢作鈴子に連絡を取ろうとします。
携帯に電話をしますが、現在使われていないとのアナウンスが。

昔借りた金を返すために、鈴子にコンタクトを取りたい剛は、新しい連絡先を調べることに。
かつての知り合いを辿ります。
しかし鈴子の連絡先を知っている人物を見つけられない。

素人での調査に限界を感じた剛は、行方不明者捜索協会に依頼。
担当の西山と鈴子の行方を追います。

そうした結果、剛が知ったのは・・・。
後悔と感謝と寂しさ。
様々な思いが剛の胸に溢れます。

最後に剛は一つの選択をします。
それがどういったものなのかは、是非本書でご確認ください。

鈴子は靴が好き。
ということで、小説内には靴にまつわるエピソードがいくつか入っています。

私も靴が好き。
好きが高じて靴のメーカーで働くことにしたほど。
好きなせいか、小説の中に靴がちょいちょい出てきます。

20年ぐらい前に発表した「ボーイズ・ビー」という小説内にも、靴職人のジジイが登場していますし。
そういえば、小説「嫌な女」の中にも靴にまつわるシーンがありましたっけ。

かつては7センチヒールの靴を履き、平気で歩き回っていましたが、さすがにもうそれは無理。
今はヒールのない、ぺったんこの靴を履いています。

たまたまネットで見つけた一足がとても足に合うので、その色違いを7色買い揃えました。
自分の足にぴったりの靴とはなかなか出合えないので、運良く見つけた時には、大人買いをするようにしています。

最高のデート

  • 2025年06月16日

文庫版になって発売された「残された人が編む物語」の内容を少しだけご紹介。
この小説には5つの物語が収められています。

その中の1つ「最高のデート」の主人公は関根由佳。
44歳の由佳は化粧品の訪問販売の仕事をして、子どもを育てています。

以前は専業主婦でした。
10年前に銀行員だった夫が失踪。
それからずっと夫の帰りを待つ生活を続けています。

由佳は定期的に、全国の警察のホームページをチェックします。
遺体で発見された身元不明者の情報を、チェックするために。

ある日、身元不明者の所持品の一覧表に、見覚えのあるネクタイの画像を発見します。

それは夫の物なのか。
由佳の心は乱れます。
生きているのか、死んでいるのかが分からない状態で10年。
ようやく真実が分かるのか。
どういう結末を自分が望んでいるのか、どんな結末ならば納得出来るのかが、分からなくなります。
由佳が最後にどういう心境に達するのかを、見届けて欲しいと思っています。

私の友人A子が、B男と別れたのは7年前。
でもA子は未だにB男のことを忘れられない。

だからB男との復縁が叶うかを、占って貰ったりしています。
占い師は「そんなもん、無理に決まっているだろ」とは絶対に言わない。
それで「今はその時じゃない」などと言う。
そして次回の占いの予約を取るように勧めてくるという。

「占い師のカモになっているだけじゃん」と私は思うのですが、A子はそうは捉えておらず、占い師の元にせっせと通っています。

果たして7年間も忘れられないほどのいい男だったのか?
私はA子に確認します。「結構喧嘩してたよね」と。
するとA子は「たまにね」と軽く流す。

そしてどこそこに行った時に、とても楽しかったとか、こんな風に言われたなどと、素晴らしかった思い出のみを熱く語ります。

そうしたエピソードは、初めて聞いた時とは若干変わっていたりします。
繰り返し思い出しているうちに、自分に都合よく、ドラマチックに編集してしまった模様。
思い出は自分で編集出来てしまうので、真実を覆い隠してしまうことがあるようです。

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