指先が
- 2014年01月06日
昔、両手のすべての指先の皮膚が剥がれてしまったことがありました。
皮膚がめくれると、その下のまだ柔らかい肌が露出するので、水などに濡れると、沁みます。
ある日突然のことで、前兆のようなものはありませんでした。
仕事先の近くにあったドラッグストアへ行き、両手の指先を見せると、店主らしき男性がちょっと顔を顰めて、引いた感じがありました。
そこで改めて我が指先を眺めると・・・確かにグロテスク。
すべての指先だけがなにかに触れるようなことをしているかと聞かれたので、パソコンのキーボードですかねぇと答えました。
化粧品や洗剤なら、掌や甲なども荒れるはずで、指先だけとなると、パソコンのキーボードぐらいしか思い浮かびませんでした。
それは最近使い始めたのかとさらに質問されたので、いや2年ぐらい使っていると答えました。
ただ、仕事先で使っているパソコンは何台もあって、その中には新しいキーボードもあるかもしれないとも説明しました。
当時、私は編集プロダクションに毎日通っていました。
ライター仕事だと聞いていたのに、行ってみれば、ただの入力作業で不貞腐れましたが、背に腹は代えられず、時給欲しさに通っていたのです。
バスケットボールのコートぐらい広さの部屋に、ずらっとパソコンが並んでいて、朝、出勤すると、各自空いているパソコンで作業をするというシステム。
毎日、使うパソコンは違いました。
これを聞いた男性は、うーむと唸ります。
男性の話では、こうなった原因に2つの可能性があり、どちらにも薬はあるが、2つの薬は相反するものなので、どっちなのかを見極めて、正しい方の薬を塗らないと、かえって酷くなるとのこと。
1つは、キーボードに塗られているであろうコーティング剤などにアレルギー反応を起こした可能性。
もう1つは、水虫の菌をもっていた人が触れたキーボードを触ったことによって、水虫に感染した可能性だと言います。
み、水虫?
まだ乙女心を残していた当時の私には、「水虫」という単語は強烈過ぎました。
コーティング剤にアレルギーの方でお願いしますと、私が言うと、それで出す薬は、もし水虫だった場合、症状を悪化させてしまうんだよねと、男性は心配そうに繰り返しました。
病院に行って、ちゃんと診察してもらうのが一番なんだけどと男性は言うのですが、その日は土曜日の夕方かなんかで、開いているクリニックはなさそうでした。
同僚に、同じ症状の人はいないのかとも尋ねられましたが、毎日顔ぶれは違っていましたし、和気あいあいとは真逆の職場環境で、会話はゼロ。私と同じ症状に悩む人がいるのかどうかはわかりませんでした。
判断に迷うドラッグストアの男性。
水虫であって欲しくない私。
二人の間で、押し問答が続きました。
結局、私の希望通り、コーティング剤にアレルギーを起こした時に塗る薬を入手。
症状が悪化したら、すぐに薬を塗るのを止めて、病院へ行くなり、今一度ここに来てくれと念を押す男性に、「はい」と力強く返事をして、店を出ました。
めでたし、めでたし。
えっ?
結果、どうなったかって?
薬を塗ったら、皮膚の剥がれが止まり、みるみる改善。
やはり、コーティング剤にアレルギー反応を起こしていたようです。
同じ症状であっても、原因が「水虫」というのは、どうも受け入れたくない。
そんな気持ちになるのは、どうしてでしょうか。