ナースが

  • 2014年06月09日

そこそこの規模のクリニックに行った時のこと。
ドクターによる問診が終了し、採血することに。
採血は隣の部屋で行うので、そこで待っているようにとの指示が。
言われた通り、隣室で待っていると・・・現れたナースにびっくり。
乱れ髪がハンパない。
竜巻の中を突っ切ってきましたと言われたら、やっぱりと納得してしまうぐらい。
一応ひっつめてはいらっしゃいます。
ゴムとピンを使って、髪をまとめようという気持ちはあるようにも見えます。
が、不器用なのか、あるいはきっちり縛るのは嫌なのか、はたまた朝はぴっちり縛っているが、激務をこなしているうちに乱れてしまうのか、それともいい女はアンニュイでなければならないという独自のポリシーをお持ちの方なのか・・・妖怪に近い感じになっています。
年の頃は、30代から50代ぐらいの間でしょうか。
幅がやけにあるのは、オリジナリティが強過ぎて、人間の年齢の尺度をあてられないように思うから。
もし、私が入院患者だったら、このナースに夜勤はしていただきたくない。
トイレに行った帰りかなんかに、巡回中のこのナースと鉢合わせでもした日にゃ、失神しますね、まず。
kurinikku
乱れ髪のナースが聞いてきました。
「アレルギーはありますか?」と。
おう、そうだったと思い出した私は、アルコールで肌を消毒すると、赤くなりますと答えました。
「そうですか。ちょっとお待ちください」と言って、ナースはどこかへ消えました。
大抵注射を打つ前に、ナースが消毒液が含まれている脱脂綿などで肌をきれいにしてくれますが、私には合わないようで、赤くなってしまうのです。
別に痛みも痒みもないので、いいっちゃいいのですが、それを見たナースが慌てたりすることもあるので、事前に報告するようにしています。
ところが。
待てど暮らせど、乱れ髪のナースは戻ってこない。
クリニックで私がこうしたことを言うと、ナースは「そうですか」と手近の引き出しかなんかを開けます。
そして、通常よりマイルドな消毒液が含まれているらしき脱脂綿を、ささっと用意してくれるのですが。
私のような人は滅多にこないクリニックで、在庫を遠い場所に取りに行かなくてはいけないのか、ナースは戻ってこない。
しょうがないので、左袖をまくり上げた状態で、壁にかかっているカレンダーを眺めて、来週誰かの送別会なんだなと、クリニック内のイベント情報をゲット。
やがて、あまりに戻ってこないので、私のことを忘れて別の仕事に没頭しているのではとの不安が。
ナースが消えたカーテンの向こうを覗いて、声をかけてみようかとの思いが湧き上がってきますが、カーテンを開けたら、斧を研いでいるような気がして、それもできません。
随分経ってから、ようやく乱れ髪のナースが戻ってきました。
「お待たせしました」と言うナースの声は若干息が切れているようです。
「どこまで行ってました?」と聞きたい気持ちを抑えて、「いえ、こちらこそお手間をかけます」と声をかけました。
いつもなら、注射を打たれている時は、そこに目がいかないよう、あらぬ方へ顔を向けているのですが、変なものを打たれて、身ぐるみはがされるといった物語が頭に浮かんでしまったので、じっと注射針を見つめました。
何事もなく採血が終わり、ほっと胸を撫で下ろしました。
その時、乱れ髪のナースがうっすらと微笑んでいることに気が付きました。
入室してから初めて見る、笑みでした。
もしかして、採血好き?
その乱れ髪で採血好きというのは・・・背中がぞくっとしてしまいました。

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