アイデアが

  • 2015年02月19日

小説のアイデアはどこから?
よくいただく質問です。
ケースバイケースなんですね。

たとえば「週末は家族」の場合は・・・実は別のアイデアがあり、それを編集者に話していました。
それは2つの家族の物語で、期間限定で1つの家に住むことになり、そこでそれぞれがもっていたルールと価値観がぶつかり合うといったもの。
が、どうも編集者は気乗りしない様子。
なんでも、まったく同じではないものの雰囲気が近い作品をつい最近発行した。評判はとても良かったが、売り上げ面では厳しかった、とのこと。
そう言われてしまうと「いや」とか「でも」なんて言葉は私からは出しにくい。
しょうがないのでパラパラとネタ帳を捲ります。
日頃から使えそうなアイデアを、ネタ帳に書いてあるのです。
それはアイデアなんて呼んでいいのか躊躇う程度の、ちょっとしたひと言程度なんですが。
そのネタ帳の中に「週末だけ里親になる制度」という言葉を見つけました。
以前新聞でこの制度の記事を読み、心に引っかかって書き留めていたのです。
編集者に話してみると、さっきと比べて明らかに食いつきがいい。
作家は書きたい作品を書いていると思っているあなた、それは間違いです。
作家は自身ですんごいアイデアだぜと思っていても、編集者がOKを出してくれないと、日の目は見ないんですね。
作品を発表できない。
編集者が「それ、いいですね」「面白そうですね」と言ってくれない限り、作家は書き始めることさえできないのです。
で、こっちのアイデアには編集者が興味をもっている手応えを感じた私は、もてる力を最大限使って、これでもかとばかりにアイデアを膨らませていきます。
精一杯のプレゼン。
そうして「GO」の指令を受けて書き始め、完成したのが「週末は家族」です。
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苦し紛れのアイデアというケースもあります。
編集者から「恋愛ものを書いてください」と言われました。
思わず私は自分の鼻を指差して「私に言ってますか?」と確認してしいました。
こういう提案は生まれて初めてで、誰かほかの作家と間違えているのではと思ったのです。
が、編集者はいたって真面目な顔で「はい」と答えます。
うーんと首を捻る私に、「広い意味で解釈していただいて」とか「男女間でなくても、人類愛的なものでも」とどんどん範囲を広げていってくれます。
だったらなんでもいいんじゃんとのツッコミは心の中だけで。
私は「考えておきます」と答え、その日は終了。
こういうのはよくあるケース。
執筆の依頼を頂戴した時、それじゃ明日からとはならないもの。
今現在執筆しているものが終われば、次の約束をしている出版社の執筆に取り掛かるといったスケジュールがすでに決まっているので、書き始めるのは先の話。
「それではその頃にまた」と言って、二度と連絡してこない編集者は数知れず。
異動してしまったり、私に興味をなくしたりといった様々な理由で、それっきり連絡してこないという人はとても多いのです。
今回もそういうことになるかもしれないしな、なんて自分に都合よく考えて、「恋愛ものを」という依頼のことは忘却の彼方に。
が、そうはいかなかった。
半年ほど経った頃「また仕事場に行ってもいいですか?」と件の編集者から連絡が。
やっべぇよ、半年も時間があったのに、まったくアイデアを練っていませんでしたとは言えないでしょ、大人として。というか、プロの作家として。
といった気持ちになりまして、その編集者が来るという日の前日に、ううーと唸りながら捻り出したアイデアが、恋愛の神様がいるって設定はどう? というものでした。
一笑に付されて撃沈するかもしれないと思いながらも、翌日来た編集者にアイデアを告げると、「おっ、面白そうですね」とのリアクションが。
胸を撫で下ろしながら、そうは悟られないように注意してアイデアを膨らませていきます。
話しているうちに、物語の骨格が出来ていく手応えを感じていきます。
こうして完成したのが「恋愛検定」です。
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どちらも文庫と電子書籍で読むことができますので、未読の方はぜひどうぞ。

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