登場人物

  • 2015年09月24日


これまでたくさんの登場人物を書いてきました。
どの登場人物も愛おしい存在です。
とはいえ、やはり好みというのがあります。
私好みという登場人物もいるのです。
読者にも特に好きだった登場人物というのがいるでしょう。
これが一致する時と、一致しない時があります。

「嫌な女」に出てくる居候弁護士の磯君は、なぜか読者には人気のようです。
編集者からも「磯君、いいですよね」などと言われます。
その度に「そうなの?」と驚いてしまいます。
磯君は泣き虫で「泣くなよ、お前」と思いながら書いていたので、しょうもないなぁといった印象が私にはありました。
でも、読者はそういうダメな部分も含めて、好感をもってくださるようです。

「嫌な女」で私がとても好きなのは、1シーンだけ登場する芸者さん。
日本髪で着物を着たまま、くわえタバコをしながらスクワットをするという、健康を意識してるんだか、してないんだかよくわからない女性。
こういう個性的な登場人物が生まれた時、そのキャラを大好きになります。

「ボーイズ・ビー」では、ブリッツというドイツ人の男性料理人が出てきます。
片言の日本語を話し、意味を取り違えてズレた会話をしたりするのですが、ご愛嬌。
少ない出番ながら、彼は読者の心を摑むのが上手だったようで「ブリッツさんが好きなんです」といったコメントをしばしば頂戴します。
syousetu
新刊「ワクチンX 性格変更、承ります。」では1シーンだけ登場する女性美容師に、憧れのような気持ちがあります。
「自分で小説に登場させておきながら、憧れるって変じゃない?」とのご指摘があろうかと思いますが、その通り、変なんです。
登場人物を最初に作るのは勿論私なのですが、そこに命を吹き込もうとして毎日頑張っているうちに、やがてそれぞれがちゃんとした個性をもった生き物として存在しているような感覚になっていきます。
なので「〇〇はどうして、ここでこの決断をしたんでしょう?」と取材されても「さぁ。〇〇が決めたことで、私が決めたんじゃないのでわかりません」なんて、不思議ちゃん全開の回答をすることになります。
この女性美容師も、私の一部ではなく一人の他人として見ています。
それで、憧れているのです。
派手な経歴があるわけでも、重い宿命を背負わされて生きたわけでもなく、フツーに毎日を過ごしてきた女性。
それでもその経験から、こうした方がいいんじゃなかといった自分なりの考えをもっている。
年を重ねて、様々なことを見聞きしてきた人だけが辿り着ける場所に、この美容師はいるんでしょうね。
そういう人のひと言は、とても重みがあります。

ここに上げたのは、いずれも脇役です。
1シーンだけのキャラクターも。
主軸となる登場人物では、ストーリー上こういう行動を取って貰わないと困るといった思いがあるため、制約の中で動かすことになります。
これが脇役になると、なんの役割も担わされず自由に動き回れ、それが癖のあるキャラクターになるのかも。
そして、ちょっと癖のある人が好きな私は、心を惹かれるのかもしれません。

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