1人ホテルで

  • 2016年06月20日


仕事がらみで地方のホテルに1人で1泊。
土地勘のない場所で夕食をどうするかは難問なのですが、そのホテルは夕食付きだったため、今回は悩まずに済むと安心しきっていました。
フロントスタッフの指示通り、午後七時頃に館内の和食店へ。
宿泊客は夕食をその店で摂る決まりのようです。
4人掛けのテーブルに1人着かされ、メニューが出てくるのを待っていると・・・和紙に筆で書かれたお品書きがテーブルに置かれました。
料理は選べず、お店が用意してくれたものを食すだけのようです。
ここらで嫌な予感が。
やがて着物を着た女性スタッフが、1品目を運んできてくれました。
どうやらこちらでは、料理を1品ずつ提供してくれるお上品なスタイルを取っている模様。
これ、1人食にはツライ。
どうせならその土地の美味しいものを食べたいとは思いますが、できれば1品とか1定食スタイルで、ちゃっちゃっと食べたい。
次の料理が出てくるまでの間がもたないので。
旅慣れている人であれば、スマホや本などを用意しているのでしょうが、なにも考えずに椅子に座った私は、部屋のキーしか持っていない。
私の背後の席に座っている3人の女性たちが、それぞれの嫁への不満をぶちまける会話をただ聞いていました。
こうなると背後の席が無口なカップルなんかじゃなくて良かったと、心の底から思います。
聞いているだけで間がもったので。
姑の悲哀について聞きながら1品ずつ食べて行き、ようやくデザートに。

翌朝はスケジュールの都合上、午前六時に朝食を摂ることに。
いつもとは違う寝具だったため、質の良くない睡眠だったことや、いつもよりかなり早い時間に起きたことで、頭はぼんやりしています。
朝食をパスするという言葉は私の辞書にはないため、そんな状態であっても、朝食のチケットを手に部屋を出ました。
和食か洋食かどちらか選べるというので、洋食を選択。
昨夜とは違うレストランの4人掛けのテーブルに着くと・・・女性スタッフが水とオレンジジュースを運んできました。
ん?
昨夜和食の店で、着物姿で私に1品ずつサーブしてくれた女性です。
今朝は白いブラウスと黒いスカート姿。
あなたのシフトは随分とキツいねぇと、思わず同情したくなりました。
昨夜の和食店で何時まで働いていたのか知りませんが、翌朝の午前六時にきびきびと働いていることに感心しました。
きちんと化粧をして、髪はまとめ上げていて、身支度もちゃんとしています。
通常のシフトがそうなのか、それとも誰かが具合が悪くなったといった理由によるイレギュラーなシフトなのかはわかりません。
いずれにしても大変な働きっぷりです。

新刊「総選挙ホテル」はホテルが舞台です。
ホテルで働く人たちが登場します。
中には無理なシフトで働くスタッフもいるでしょうし、やる気のないスタッフもいるでしょう。
様々なセクションの人たちが、迷ったり悩んだりしながら働いています。
スポットは働くということだけでなく、そのプライベートな領域にも。
その人の人生を描きたいと思いながら書きました。
ぜひ読んでみてください。

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