編集者が

  • 2025年10月16日

昔、フリーランスのライターをしていた頃のこと。
ある編集プロダクションに出入りしていました。

そこではマンションの一室に、ぎゅうぎゅうにデスクが詰め込まれ、編集者たちが仕事をしていました。
私のような下請けたちは隅の席で、打ち合わせをしたり、執筆をしたりしていました。

それは午後七時ぐらいの出来事。
電話を受けた編集者が「Aさん、お家から電話です」と言う。

Aはそこの正社員の女性編集者。
Aは電話を代わり話し出す。
「分からない。まだまだ時間が掛かると思うから。分からないって。はいはい」などと、割と雑な対応をしていました。

数日後。
またその編集プロダクションの片隅で仕事をしていると、「Aさん、お家から電話です」という声が聞こえてきた。
デジャヴか?

聞き耳を立てていると「分からない。まだ仕事が終わらないから。分からないって。はいはい」と、前回とほぼ同じフレーズがAの口から。
時間もほぼ一緒。

おいおいと思った私は、後でこっそりライター仲間に確認。
私が想像した通り、Aは毎日、家からまだ帰らないのかという電話を受けているという。

Aは30代半ばの独身で実家暮らし。
同居の親はほぼ毎日Aの職場に電話をして、何時に戻るのかと聞くという。

電話をしてこないでとAが頼んでも、親は聞き入れずに電話を掛けてくるのでしょうか。
そこら辺の事情は不明ですが、Aが不憫でした。

文庫版が発売になった「結婚させる家」には、両親に恵まれない子どもが登場します。
菰田純子には色々な夢がありました。
でもそれらのすべてを諦めてきました。
両親の意向に逆らえなかったから。

両親が愛してくれているのは分かっているので、自分の意思を押し通すことは我が儘だと思っていた。

そんな純子が一念発起して、結婚情報サービス会社に入会。
勿論、両親には内緒。

辣腕相談員、桐生恭子の手を借りて、パートナー探しを始めます。
果たして恭子は自分の人生を、自分の手に取り戻すことが出来るのか。
本書でお楽しみください。


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