体重計
- 2011年07月07日
毎年人間ドックを受けます。
そこでの計測によれば、3年連続で、身長が1センチずつ、伸びています。
成長期であれば、喜ばしいニュースでありましょうが、この年になると、首を捻るばかりです。
昔のように、検査人の目視での数値なら、誤差だと納得もできるのですが、毎年計測してもらっているクリニックでは、自動式の計測器を使っています。
検査人がスイッチを押すと、頭上でスタンバっていた、板状のものが、ためらいもなく私の脳天にストンと落ちてきます。思わず「いてっ」と声を上げてしまうほどの、衝撃です。しかし、その板状のものは、逃げるようにスルスルと元の高さに戻って、知らん顔。といった、非常にクールな計測器です。3年連続でミスをするようなヤツには思えません。もしかしたら、本当に身長が伸びているのかもしれません。
人間ドックの後で、体重計の身長の数値を修正します。
毎日1回はのっている体重計がこれです。
4年ぐらい使っているので、ちょっと傷が目立ちますね。
この体重計の数値を修正するのは、人間ドックのほかに、誕生日にも行います。
誕生日には、年齢の数値を1つ増やさなくてはいけませんから。
大変お恥ずかしい話なのですが、私は自分の年齢を、ちょいちょい忘れます。
仕事柄、十歳の少年の気持ちになろうとしたり、七十歳のジジイの心で世界を見るように努めたりしているうちに、本当の自分の年齢がいくつだったか、すぐに思い出せなくなってしまいました。
普段は、別に困ることもないのですが、ホテルにチェックインする時などに、ちょっと焦ります。
宿泊者カードに記入を求められますが、大抵、そこには年齢を書く欄があります。
そこで、ぴたっと手が止まってしまいます。果たして、私は今、いくつだったかしらと。
そこで、今年は2011年だからと、生まれた年との間で、引き算をしようとします。生年月日の数字は、覚えています。
ところが、4桁から4桁の引き算になると、それはそれでやっかいなものでして、隣の位から借りてきて、なんて考えてるうちに、時間ばかりが過ぎていきます。終いには、フロントスタッフから、「そこは、書かなくてもよろしいですよ」と優しい言葉をかけられたりしてしまいます。その顔には、「年齢を隠したいんですよね」といった表情が浮かんでいます。
「年齢を隠したいわけではなくて、思い出せないんです」と言いたくなりますが、その方が、却って、理解は得られないだろうと思い、宿泊を拒否されるのは困るので、半笑いするだけにして、フロントスタッフの好意に甘えるようにしています。
この体重計のスイッチを入れると、その都度、入力してある年齢が表示されているという事実に、最近気付きました。
基礎データが毎回表示されていることに、どうして4年も気が付かなかったのかと、己のぼんやり具合にびっくりしますが、同時に、これで、もう年齢を忘れることはないだろうとの確信も覚えました。
毎日、自分の年齢の数字が、目に飛び込んでくれば、よもや、忘れまいと、思うのです。
これからは、ささっと、宿泊カードに記入できる人になれるのではないかとの、希望がもてました。