名犬ウォントントン
- 2011年10月03日
心に残った映画を上げなさいと言われたら、「名犬ウォントントン」と答えます。
まだ小学生の頃、場末の映画館で母親と一緒に観たのを、今でもはっきりと記憶しています。映画館には、私たち親子を含めて5人の観客のみ。興行的には、苦戦していたのかもしれません。
アニメではなく、実写版で、主役はシェパード犬でした。ビジュアル的にもっと可愛らしい犬はたくさんあるというのに、シェパードを主役にしているあたりが、子ども向けに作られた映画ではなかったようにも思えます。
この犬が人間の女性に恋をします。
当然、この想いは一方通行になります。
紆余曲折がありますが、最後はハッピーエンドになります。
この最後のシーンで、「あー、良かったぁ」と私は大きく息を吐き出しました。この時の、自分の息の感覚を、三十年以上経った今でもはっきりと覚えています。この時覚えた安堵感がいかに大きかったかを物語っているようです。それだけ、映画にのめり込み、シェパード犬、ウォントントンに感情移入していたのでしょう。
月日は巡り、過去の映画をビデオやDVDなどで、再び観られる時代になりました。
探してみましたが、この作品はこうした記録メディアに残されていないようでした。
ストーリーも、多くのシーンもはっきりと覚えてはいますが、もう一度、観たいという思いは募ります。
このことを知人に話したところ、いや、却って、記憶の中に留めておく方がいいのではと、言われました。
なんでも、その人にも、子どもの頃に観て、強烈に感動した映画があったとか。それを大人になって、ビデオで観たところ、びっくりするほどつまらない映画だったそうです。この程度の映画に感動していた、我が幼き日々を思い、自分が可哀想に思えたと、その人は語りました。
そうかもしれませんね。
感動したという記憶だけを、胸に留めておく方が、いいのかもしれません。
ほかの思い出と一緒ですね。