あの日
- 2013年03月11日
あの日――。
地震がきた時「あぁ、この世が終わる」と思いました。
そして「こんな終わり方って、アリかよ」とも。
まだ揺れている中で、手を伸ばしたのは、原稿の入っているUSBメモリーでした。
これだけは守らなければと、なぜか、そう思い、引き出しに入っていたUSBメモリーを取り出し、ずっとそれを握りしめていました。
揺れが治まった後、どれくらい呆然としていたか、よく覚えていません。
そうだ、テレビを付けてみようと思い付くまでに、相当の時間がかかりました。
付けたテレビから流れてくる情報は、耳を疑うようなものばかりで、気が付けば、身体が震えていました。
胸に溢れるのは、無力感と絶望感。
あれから2年。
未だ復興の足掛かりさえ掴めていない方たちが多いということが、残念でなりません。
私はといえば、家具を固定する粘着マットを使用したり、水のペットボトルを常備するようにしたり、非常用トイレ袋を買ったりと、防災グッズを用意するようになりました。
そして、仕事でも、少しの変化が。
「いつか」「そのうち」という言葉を使わないようになってきたように思います。
いつか、こういう作品を書きたいという考え方から、今、書かなくてはとの想いに変換したような。
いつ、なにが起きて、どうなるかわからないという事実が、胸に刻まれた結果、先延ばししてはいけないと気が付いたのでしょうか。
その一方で、書けないこともあります。
震災直後、この震災をテーマにした小説を書いてみる気は? と、ある編集者から尋ねられました。
即座に「無理です」と答えました。
私の中で、受け止めきれていないので、書くという行為にまで辿り着けないと説明しました。
ある程度、自分の中で咀嚼できるまでになっていないと、書くということはできません。
2年経った今も、震災を扱った小説を書く気にはなりません。
まだ、受け止めきれていないようです。