エレベーター点検
- 2013年03月28日
その日は、午後1時から午後2時まで、エレベーター点検があると、予告されていました。
午後3時半になったので、1階にあるダストルームまでゴミを捨てに行き、ついでに、ポストに投函をしに行こうと、ドアを開けると・・・エレベーターの扉には、「点検中」の札がかかっていました。
えっ? 1時間半も予定よりズレている?
まぁ、そんなこともあるか、と、すんなり納得できるほど、大人ではない私。
我が家は6階。
階段の上り下りは結構、キツい。
が、ゴミは後でもいいとしても、ポストへの投函は、先方に届く予定日のことを考えると、今、行っておきたい。
という望まない結論に辿り着き、ぶつぶつ文句を垂れながら、非常階段で1階へ。
ゴミを捨て、ポストに投函し、非常階段で6階へ。
取り組みが終わったばかりの力士のように、荒い息遣いで、部屋の鍵を開けていると、チンと明るい音がして、エレベーターのドアが開きました。
振り返ると、作業員が1人中にいて、腕を外に伸ばして、点検中の札を外そうとしていました。
なんちゅうタイミング。
今日はついてない、やれやれ、で、終わるかと思いきや・・・。
午後5時頃になり、玄関横にある、シューズラックの前で靴のお手入れをしていると、ウイーンと、エレベーターの動作音が微かに聞こえてきました。
ウイーン。
ウイーン。
ウイーン。
ん? ただのBGMとして、聞き流していましたが、なんか、おかしい。
メッチャ、エレベーターが動きまくっている――。
私が住んでいるマンションは、1フロアに1世帯しかなく、階数も多くはないので、そんなにエレベーターが、あぁ、忙しいというほど、動くことはないんですね。
1時間半前には、点検は終わっていたのだから、明らかに、このエレベーターの動作音はおかしい。
で、外に出て、エレベーターの扉を眺め、どうしたもんかと、しばし考えていると、ウイーンという音が聞こえてきました。
表示板に矢印が点灯し、エレベーターが1階から2階へ移動した模様。
しばらくすると、またウイーンという音がして、エレベーターは2階から3階へ。
そして、3階から4階へ。
うちのマンションは、玄関ドアの鍵と、エレベーターのスイッチが連動していて、住人であっても、ほかのフロアには行けないようになっています。
つまり、6階に住んでいる私が、4階に行きたくて、エレベーターの「4」のボタンを押したとしても、スイッチが入らないので、4階に行けないというつくり。
なので、このエレベーターの動きは、明らかに、ありえないってことなんですね。
なんだ、これ。
と、思っている間にも、エレベーターはどんどん近づいてきます。
そして、とうとう、我が6階に。
なんだかよくわからないのですが、恐怖のようなものを感じます。
チンと音がして、扉が開くと・・・作業員が二人。
中の階数表示板の前に屈んでいて、なにやら作業中。
私に気付くと、「あっ」と言い、「どうぞ」と中に誘ってきます。
「いえ、乗りたいのではありません。作業がずっと続いているようだったので。壊れてるんですか?」と尋ねると、作業員が「いえ。全然大丈夫です」と返答。
全然、大丈夫じゃないだろう、どう見ても。
作業員、増えてるし。
午後2時終了予定が、3時間もオーバーしてるんだし。
とは思いましたが、それ以上つっこめず、「そうですか」と言うにとどめるしかなく。
その後もウイーンは、続き、静かになったのは、午後9時頃でした。
翌日、エレベーターに乗ろうとした時、大丈夫だろうかと、一瞬足が止まってしまったのも、致し方ないと言えましょう。
ドキドキしながら、1階に下り、用事を済ませ、6階に無事に戻れた時には、拍手しそうになりました。