• 2013年04月22日

中学生の頃のことです。
天気のいい日でした。
日曜日だったような気がします。
親の部屋に寝っころがって、窓越しに空を眺めていました。
当時、私は自分の部屋をもっていたのですが、そこはマンションの通路側に面していたため、空を眺めることはできませんでした。
それで、わざわざ、空を眺めるために、親の部屋に行くのです。
そんなに空を見たいなら、外へ出ればいいのですが、基本的に出不精なので、家から出ないで、部屋を移動することで済ませていました。
kumo
空に浮かぶ雲の中から、なんとなく好きな形の雲を一つ選び、それをぼんやり眺めていました。
その雲がゆっくり、ゆっくり、動いているのを、ひたすら追い掛けます。
と、自分が寝ている布団の方が、動いているということに気付きました。
そう、そう。
知ってる。
地球は自転してるから。
でも、自分の方が回っているとわかるほどの速度じゃないはず。
気のせい、気のせい。
と言い聞かせるものの、一度、自分の方が動いていると感じてしまうと、それを振り払うことができません。
回ってる、私――。
しばらくすると、胃がむかむかしてきました。
起き上がり、胸に手をあて、考えます。
これは、車に酔った時に覚えたのと同じ不快感。
ってことは、私は酔った?
地球の自転に?
我ながら、おかしな子だと思いました。
繊細なんてレベルとは違って、間抜け過ぎます。
薬箱の中を引っ掻き回し酔い止めの薬を探しましたが、説明書きによれば、酔う前に飲んでおくもので、酔ってからでは効かないといったことが書かれていました。
仕方がないので、頭に氷嚢をあて、自室のベッドに横になり「動いてない。私は全然動いていない」と言い聞かせ続けました。
三十分ほどすると、胃の不快感はなくなり、地球が動いているという感覚も消えていました。
ふうっ。
人心地がついた私は、それからどうしたかというと、居間のテレビの前に座りまして、当時のお気に入りだった、藤山寛美さんの松竹新喜劇の舞台中継を見始めました。
さっきまで自転に酔っていたことなど忘れたかのように、ぎゃははっと大笑い。
こんな風に、休日は過ぎていきました。

今、振り返ると、中学生の頃は、暇だったのか? とか、昔っから、私はちょっとおかしかったんだなとか、藤山寛美さんは偉大だったな、などと、いろんな感想が浮かんでまいります。

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