ベビーカーに

  • 2013年08月26日

猛暑の中、バスを待っている時でした。
早く来てくれと、バスがやって来る方向を睨んでいると、背後で女性の声が。
「いい子にしてるのよ」
振り返ると、女性がいて、その人がベビーカーに向けて話し掛けていました。
黒いベビーカーは、日差し避けでしょうか、黒いメッシュ製の蓋のようなもので覆われていました。
そのベビーカーの持ち手には、トイレットペーパーが引っ掛けられ、シートの背後部分にはレジ袋がのせられています。
買い物帰りでしょうかね。
この暑さの中での買い物は、お母さんも赤ちゃんも、大変だと思い、私は再びバスが来るであろう方向へと顔を戻しました。

やがて、バスがやって来て、やれやれと、私はベンチから腰を上げました。
さっきの女性の前を通り過ぎる時、また「いい子にしててちょうだいよ」と、女性がベビーカーに向かって話し掛けています。
なんとなく、ベビーカーの中を覗くと・・・なんと、ビーグル犬でした。
ベビーカーに犬をのせているのを、私は初めて見たのですが、すでにポピュラーになってましたか?
この激暑では、アスファルトもきっと高温になっていることでしょう。
歩くと、火傷しちゃんでしょうかね。
basu
先に乗り込んで座席を確保した私は、どうしたって、後から乗り込んで来るビーグル犬と飼い主の女性に注目してしまいます。
バスの運転手は、ベビーカーの中の犬に気付いたのか、気付かなかったのか、まったく動揺を見せません。
前方の一人掛けの席に座った女性は、自分の横にベビーカーをおき、また「いい子にしててよ」と話し掛けます。
それだけしつこく声をかけるというのは、普段はよっぽど悪い子なんでしょうか。
バスが動き出し、バス停に停まる度、新たなお客さんが乗り込んできます。
件の女性の通路を挟んだ向かい側には、横向きのシルバーシートがありました。
そこに座ったアダルティな女性。
ちらっとベビーカーに目をやり、ん? という顔をして、かけていた眼鏡を一旦外し、今一度中を確認してから、眼鏡をかけ直しました。
良かった。
驚いたのは、私だけじゃなかったようです。
電車の中などで、赤ちゃんを連れているお母さんに、アダルティな女性というのは非常に気軽な様子で話し掛けますよね。
そういう現場を何度も見たことがあります。
何ヵ月? とか、男の子? とか。
あれは、どうしてなのかと、いつも不思議に思っていました。
本能が、声を掛けてしまうのでしょうか。
さて、このアダルティな女性はどうするでしょうか。
興味の対象は人間の赤ちゃんだけでしょうか。
ここでも、声を掛けちゃってほしいと念じながら、じっと見守っていると・・・なんていう犬? と話し掛けました。
よしっ。
と、なぜか私はガッツポーズ。
ビーグル犬ですと答える飼い主。
いくつなの? オス? とアダルティな女性の質問が続きます。
私はそこで、バスを降りてしまったのですが、きっとアダルティな女性の質問は続いていたことでしょう。
見ず知らずの人に話し掛けちゃうアダルティな女性。
嫌いじゃないです。
なんだか、そんな人の小説を書いてみたくなりました。

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