怪しい女

  • 2016年11月17日

去年の秋のこと。
信号待ちをしている時、怪しい雰囲気の女性を発見しました。
20代に見えます。
この女性がやけに辺りを窺うのです。
その周囲を気にする様子で、却って目立っている。

しばらく眺めていると・・・身体を半分に折り、地面にあったなにかを摑みました。
ん?
それは、信号機の横にある銀杏の根元あたり。
もしかして?
と、さらにじっと見つめていると・・・再び前屈し手を伸ばす。
その手にはビニール袋が被さっていて、銀杏の根元に落ちているなにかを広い、すぐにビニール袋をひっくり返して、その手をトートバッグの中に隠しました。
そう、銀杏を拾っていたのです。
ビニール袋を使って手が臭くならないようにしながら。
ginnnann
少し驚いた私は、なおも彼女を見つめ続けました。
きょろきょろと辺りを窺い、前屈し、銀杏を超特急で拾うとすぐにトートバッグに隠す。
これを繰り返します。
ずうずうしい人なら、堂々と銀杏を拾うのではないかと思うのです。
でも彼女は違う。
明らかに人の視線を気にしている。
ということは恥ずかしさや罪悪感的なものがあるのでしょうか。
そうしたものを抱えながらも拾い続けるのは、業でしょうか。

街路樹の銀杏が落とした実は、誰のものなのか。
その道路を管轄しているのが国なのか、都か区なのかわかりませんが、そうした部署の物なのでしょうか?
どこかの物だからこその、そうしたこそこそとした銀杏拾いになっているのか。
ふと周囲を見回すと、銀杏並木は400メートルぐらい続いています。
道の両側にあるので合計800メートル。
結構な本数の銀杏があります。
制覇するつもりでしょうか。
しかし人の視線を気にする彼女はちょっとずつしか拾わないので、制覇するとしたらとんでもなく時間がかかるように思います。
それでも挑戦するのでしょうか?

青信号になり、私はその場を離れたので、その後彼女が目標を達成できたのかどうかはわかりません。
昔、たくさん食べると鼻血が出ると聞いたことがあるので、彼女が鼻血ブーになっていないといいと思います。

今年は秋が短く、あっという間に冬になってしまったような気が。
そして今年、彼女の姿を見ることはありませんでした。
秋が短かったせいでしょうか。
それとも今年も彼女は収穫したけれど、たまたま私が遭遇しなかっただけでしょうか。
彼女に聞きたいです。
今年の出来はどうでしたか? と。

ブログ内検索

  • アーカイブ


  • Copyright© 2011-2024 Nozomi Katsura All rights reserved. No reproduction and republication without written permission.

    error: Content is protected !!
    Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.