全長5センチほどの

  • 2018年06月18日

自宅マンションを出ようと1階の自動ドアの前に立つ。
いつものようにすうっとドアが右にスライドして開く。
一歩足を出そうと自分の足元に目を落とした時、白いモノを発見。
それはイモリかヤモリか、そんな感じの動物。
全長5センチほどのそれは、体をS字S字と動かして慌てて歩いている。
凍り付く私。
そのイモリかヤモリか、そんな感じの動物は、急いで隠れようとしている様子で、やがて宅配BOXの下の隙間に入り込んだ。
なんちゅうこと。
私はこの手の動物が苦手。
それは多分小さい頃から、自然とは縁遠い生活環境だったせいだと思っています。

そんな私はよろしくないと考えた親に、小学生の夏休みに、自然教室的なイベントに送り込まれたことがあります。
初対面の子どもたちだけで1泊か2泊自然を堪能するという企画。
そこでは様々な催しが用意されていたように思うのですが、昔のことなので、記憶はすでにそのほとんどが消えかかっています。
ただそのイベント中、私は心の中で悲鳴を上げ続けていたということだけは、未だにはっきりと覚えています。
「さぁ、お待ちかねの昆虫採集ですよー」と大人のスタッフから楽しげに言われ、人生を憂いた記憶はしっかりと残っています。

その後も自然や小動物とほとんど接触することなく成長し、現在に至っています。
なので苦手も克服できていない。
そんな私がマンションの1階で、イモリかヤモリか、そんな感じの動物を見かけてしまったわけですから、もう大変。
1階の自動ドアの前に立つ度、またいるんじゃないかとビビりまくる。

彼が宅配BOXの下の隙間に姿を隠したというのも、私の恐怖心を煽る。
それまでそこに隙間があったことなど、全然気が付きませんでした。
それぐらいの薄さ。
そこを潜り抜けられるということは、人間が隙間なんかないと思っている場所でも、彼は隙間を見つけて通過するかもしれない。
ということは、密閉されているように見える宅配BOXの庫内に入り込むかも。
と、妄想はどんどん広がっていき、結果、宅配BOXを開錠する時はかなり腰が引けるように。
暗証番号を入力すると「ピロリン」と開錠音がする。
私はすぐさま一歩後退し、距離を取っておきながらの彼の存在チェック。
それから恐る恐る手を伸ばして、段ボール箱をトントンと叩く。
段ボール箱の裏側や下に隠れていた場合、離れてちょうだいという私からのメッセージ。
「ビー、ビー」と早く荷物を出して扉を閉めろやという、宅配BOXからの催促音を聞きながら、ゆっくり10数える。
それからやっと段ボール箱を取り出します。
それでも裏に張り付いているかもしれないという不安が完全に払拭されてはいないので、段ボール箱と手の接地面をなるべく小さくするべく、対角線上にある角の部分に指の腹をあてて、決して自分の身体に密着させないように注意。
そして段ボール箱を矯めつ眇めつ眺めてから、ほっと息を吐く。
宅配BOXから荷物を取り出す度に、こんなことをしています。
いつまでこれをすればいいのでしょうか。

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