手品を
- 2018年08月23日
友人A子の夫、B男が手品を始めたという。
無趣味だったB男が初めて趣味らしきものを見つけたようだったので、家族は笑顔で応援。
B男は練習を重ねた後家族にお披露目。
下手なので思いっきりネタバレしていても「わー、パパ、すごーい。どうやったの?」と家族は驚く。
打ち合わせをした訳でもないのに「わー」と驚く様子をする子どもたちを見たA子は、自分の子育ては間違っていなかったと確信したという。
ある日、B男は手品仲間と老人ホームへ慰問に行くと言い出した。
A子は大反対。
子どもたちも。
もう少し練習してからにした方がいいと、皆でB男を説得しにかかる。
自分の手品の技を褒められていると思っていたB男は、まさか家族から反対されるとは夢にも思っていなかった。
意地になって慰問に行くと言い張る。
説得に失敗し、B男は老人ホームへ。
その日・・・B男はご機嫌で帰って来たという。
なんでも入所者たちから大きな拍手を貰ったそうで。
仲間が撮ったという動画を見せて貰ったら、B男は拍手喝采を受けている。
目が悪いせいなのか仕掛けが袖口から出ているのに、驚いた様子の入所者たち。
予想外の好感触な様子に、A子はとても驚いたと言っていました。
が、それで終わらなかった。
B男が今度は仲間と養護施設に慰問に行くと言い出した。
子どもはマズい。
真っ直ぐな質問をしてくるし視力がいい。
A子たちはまたもや、もう少し練習してからにした方がと言ってみたそうですが、B男は聞く耳持たず。
養護施設に慰問に行った日、なかなかB男が帰って来ない。
玉砕されて、どこかで飲んだくれてるんじゃないかと家族は思っていたらしい。
日付けが変わる頃B男がご帰還。
荒れているかと思ったらにこにこ顔だったとか。
なんでも、1人鋭い子がいて「それはなに?」とか、「そっちの手を見せて」などと言ってきたらしいのですが、職員がどうやったのか、その子を黙らせてくれたため、会は大変盛り上がったとのこと。
子どもたちが自分の手品に夢中になってくれている様子が、とても嬉しかったらしく、B男はもっともっと上手になって、もっとたくさんの子どもたちに見せたいと宣言したそうです。
A子は言いました。
「毎日のように怖い事件や、殺伐とした話を聞くけれど、なんだかんだ言っていい人って多いのね」と。
皆の思い遣りを感じたそうです。