パン当番
- 2023年04月10日
中学と高校時代、我が学校にはパン当番がありました。
日直がその日のパン当番も、兼務することになっていました。
このパン当番は日直同様2名で当たります。
日直の仕事は黒板を消すことと、授業の開始と終了の際に挨拶の号令をかけること。
この仕事は大したことがありません。
これよりも大変だったのが、その日に担うパン当番をきちんとこなすことでした。
学校には1店だけパン店が入っていました。
当時コンビニはなく持参の弁当か、そこでパンを買うしかありませんでした。
ここでパンを買うのはとても大変。
昼休み開始のチャイムが鳴ったら、猛ダッシュで1階の奥にあるパン店まで、走らなくてはいけなかった。
遅れをとったらラッシュアワーの電車内のような状態になっている店で、延々と順番待ちをしなくてはいけなくなります。
自分の番になった頃には、パンが売り切れていることもありましたし、休憩時間が終わりそうになっていることも。
そこでクラスで注文をまとめて、2時限目の休憩時間までに、注文依頼を済ませておくというシステムが用意されていました。
このクラスの注文分をまとめる役を担うのが、パン当番でした。
パン当番の朝は忙しい。
続々と級友たちから注文が入ります。
注文内容をメモしてお金を受け取り、お釣りを渡します。
この注文は授業中にも入って来ました。
パンの名前を書いた紙で小銭を包むようにしたものが、先生の目を盗んで生徒から生徒へと渡されて、パン当番に辿り着きます。
甘トーストと注文品名は書かれているのですが、肝心の発注者の名前がなかったりする。
しょうがないので、その包みを渡してきた生徒に「今の誰から?」と、先生に聞こえない程度の小声で尋ねます。
聞かれた生徒は、自分に渡してきた相手に「誰から?」と質問。
こうして遡っていく。
これは誰かがパン当番に向かって、自分だと小さく手を挙げるまで続きます。
このようにパン当番になると、授業を受けている暇なんかありませんでした。
そして不思議なことに、大抵計算とお金が合わなかった。
ちゃんと各自から注文の品の代金を貰ったはずなのに、合計してみると金額が合わないのです。
消費税なんてない時代だったので、それほど難しい計算ではなかったはずなのに、大抵お金が足りませんでした。
さぁ、どうするか。
パン当番の相方が真面目な子だと、足りない分は自分たちの財布から出して、補填しようと言います。
しょうがないので、私も財布からお金を出しました。
が、相方がいい加減な子だと「パン店のオバチャンは、気が付かないかもしれないよ」と言い出します。
「足りないと言われたら払おうよ。なにも言われなかったら、ラッキーってことにしよう」と言います。
私は喜んでその提案に乗っかりました。
こんな時の私と相方は、ドキドキしながら注文票と現金を持ってパン店に。
店員のオバチャンに渡してすぐに教室に引き返すのですが、疚しさがあるせいか、若干早足になっていましたっけ。
そして昼休みに。
私と相方は店に、クラスを代表してパンを受け取りに。
棚に並ぶケースの中から、自分たちのクラス番号が書かれたものを探します。
見つけたそれを引っ張り出すと、注文票にはなにも書かれていない。
注文した品はすべて入っているし、また不足分を払えとも書かれていません。
相方とアイコンタクトで無事を祝い合う。
これがパン当番でした。
今思うと・・・見逃してくれてたんですかね。
いつも金額が合わなくてすみませんでした。
文庫「じゃない方の渡辺」はパン店の娘の人生を描いた小説です。
懐かしいパン、勝負を掛けて開発したパン、色々なパンが登場します。
ぜひ小説の中で味わってみてください。