隣のカップルが

  • 2023年10月05日

電車のシートに座っていたら、隣のカップルの話が聞こえてきました。
恐らく男女ともに20代くらい。

カレが言う。「欲しいんだよなぁ」と。
これに対してカノジョは「そうなんだぁ」と相槌。
会話は終わり、2人はそれぞれのスマホ操作を始める。

少ししてまたカレが言い出す。「欲しいんだよ」と。
カノジョはスマホ画面から目を離さず、さっきより気持ちの入っていない声で「そうなんだぁ」と相槌をリピート。

反応が小さくなったのが嫌だったのか、カレは「これが欲しいんだよ」と自分のスマホをカノジョに見せる。

カノジョはそれにちらっと目を向けると、スマホの最新シリーズの名前を口にしてから、格好いいよねと感想を述べました。
カレは喜び「だよね。超格好いいよね」と更に同意を求める。
カノジョは面倒になったのか、画面を操作しながら「買えば?」とさらっと言う。
カレが「やっぱり? でもさ、高いんだよね」と言うと、カノジョが「いくらなの?」と尋ねました。

カレが口にした金額は確かに高かった。
カノジョは「払えるんだったら買えば。払えないんだったら我慢だよね」と真っ当なコメントをする。

するとカレはしばしの間を置いてから言い出しました。
「これを買いたいんだよ。でも給料の額は決まってるからさ、買うとしたら、なにかを我慢して金を確保しなくちゃいけないんだよ」と。
カノジョは先程よりも更に関心を失くした様子で「そうなんだぁ」とテキトーに相槌を打つ。

カレが言った。
「だからさ、連休に行こうと言っていた旅行、止めたいんだよね」と。
1、2、3。
嵐の前の静けさの秒数を私はカウントする。
3秒後にゆっくりとカノジョが顔を上げた。
そしてカレを見つめて「今、何て言った?」とそれまでより低い声で聞き返しました。

カレはもしかしたら失敗したかもと思ったのかも。
ビビった様子だったから。
それなのに先程の台詞を繰り返してしまう。

それ、もしかしたらじゃなくて、失敗です。
私はそこで電車を降りたので、その後の修羅場がどうなったのかは分かりません。
カレはいくつもの過ちを重ねています。
まず、スマホとカノジョとの旅行を、天秤に掛けたと言ってしまっているのがワンアウト。
その上で、スマホを取ると宣言してしまっているのがツーアウト。
のっぴきならない用事で行けなくなったと、嘘を吐かなくてはいけないところなのに、バカ正直に話しているのでスリーアウト。
バッターチェンジ。
カレに次の打席が回ってくるのか、すぐに二軍落ちになるのか・・・実に気になります。

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