セールの思い出
- 2023年12月21日
靴のメーカーでOLをしていた頃の話。
年に2回、工場でセールを行っていました。
期間中は工場の職人だけでなく、本社勤務の社員たちも総出で、セールスタッフとして働くのが習わしでした。
私の自宅から工場まではかなりの距離があったので、セール当日はまだ辺りが暗い早朝に、家を出なくてはなりませんでした。
同僚の車に相乗りして工場を目指します。
工場は最寄り駅から離れた場所にあり、車でセールに来ようとするお客さんで、毎回渋滞が発生するため、その混雑が始まるより前に、社員たちは現地に到着しておかなくてはなりませんでした。
眠くて目がショボショボしている状態で工場に到着。
敷地内にある体育館のようなスペースが、セール会場です。
ラックが並べられ大量の靴が。
「売れ残った商品がこんなにあっちゃマズいだろ」と心配するほどの大量の靴。
社員たちは栄養ドリンクを飲んで、パワーを注入してスタンバイ。
出入り口の隙間から外を窺うと大行列が。
夏のセールは暑く、冬のセールは寒いのに、皆さん並ぶ。
接客するこっちもパワーが必要ですが、お客さんもパワーが必要。
どっちも体力勝負です。
そしてセールがスタートすると・・・祭り状態に。
立錐の余地もないほどの大混雑。
「このデザインで〇センチはあるか?」と聞かれるので、ストックの中から探して渡すのが、私の仕事でした。
大盛況のセール会場で働きながら思ったのは、安く入手することを覚えたこの人たちが、果たして定価で買うようになるだろうかということ。
靴が欲しくなっても、次のセールを待てばいいと考えることが予想出来たから。
当時セールは毎回盛況でしたが、販売店からの注文数は減り続けていて、苦しい経営が続いていました。
結局、私が退職した後でこの会社は倒産しました。
新刊小説「この会社、後継者不在につき」には、オリジナルデザインのバッグを、販売する会社の話が出てきます。
ここの女性社長はセールはしない主義。
セールをして在庫処分をした方が、経営が楽になるとアドバイスされても、自分の考えを貫いてきました。
順調に売り上げを伸ばしていましたが、コロナが直撃。
店を休業しなくてはいけなくなるし、ネットでもバッグが売れなくなってしまいました。
後継者を誰にしようかと、考え始めた矢先の出来事でした。
経営をどう立て直すのか、後継者をどうするのか、悩みながら答えを探していきます。