新装版文庫「嫌な女」が発売になりました

  • 2025年09月11日

新装版文庫「嫌な女」が発売になりました。

今回新装版を発売するにあたり、改めて原稿をチェックしました。
すでに発表した小説を改めて読む作業は、こっぱずかしい。
当時はこんな風に表現したのかとか、ここでその展開にしたのかとか、昔の自分に驚いたりもします。
また数年しか経っていないのに、遠い昔の自分の心の内を見せられているような感覚も味わいます。

この「嫌な女」を執筆したのは15年以上前。
だからでしょうか。
普段より恥ずかしさは感じませんでした。
どちらかというと、同窓会で久しぶりに友と会ったような感覚でした。
元気だった?
変わらないねぇ。
今、なにしてるの?
と、登場人物たちに尋ねたいような気持ち。
だから今回の原稿チェックは、懐かしい人と久しぶりに再会出来た楽しい時間となりました。

この小説にはたくさんの人物が登場します。
「主人公である徹子と夏子以外で、好きな登場人物は?」と、取材で何度か聞かれました。
このような時に私は「芸者さん」と答えました。
すると取材者は大抵「芸者さん?」と首を傾げます。
1シーンにしか登場しない脇役なので、覚えていないのも当然。
多くの読者は脇役として、さらっと流してしまうでしょう。

でも私は彼女にとても心惹かれているのです。
この芸者さんは銜えタバコをしながらスクワットをして、夏子への思いを語ります。
この健康に気を遣っているんだか、いないんだか分からない矛盾だらけの人。
こういう人に私は強烈に惹かれます。

人にはいろんな面があって、相反することも同時に抱えています。
そういうおかしなところを、愛おしいと思うのです。

芸者さん以外にも、個性的で魅力的な人物がたくさん登場するのが「嫌な女」です。
ぜひお楽しみください。


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