契約
- 2026年01月26日
新刊「ウチの共有不動産揉めてます!」の発売が近付いてきました。
この小説は、親から不動産を相続したきょうだいたちの物語です。
普通の人にとって、不動産を売ったり、買ったりは、そうそう経験するものではありません。
だからどういったスケジュールで進行していくのか、どの時点でどんな書類を用意しなくてはいけないのかといったことに不慣れです。
「ウチの共有不動産揉めてます!」では、相続人の一人である長女の娘が、不動産会社で働いているため、相続人たちは皆、彼女を信頼して進行を任せます。
入社して日が浅く経験不足のため、不安がないとは言えませんが素人よりはましだから。
私はずっと賃貸で暮らしてきました。
そんな私が母親が住んでいたマンションを相続し、生まれて初めて、不動産を売却するというミッションに臨むことに。
「どんだけ必要?」と呟くほど、印鑑証明書を用意しなくてはいけなかったり、大量の書類に署名しなくてはいけなかったりと、小さいけれど侮れない事務手続きが延々と続きました。

そしてようやく買い手が決まり、その人と対面して手付金を受け取るという日。
不動産会社の応接室にいたのは、20代と思しき男性が一人だけ。
買い手は別の不動産会社だと聞いてはいましたが、まさかこんな若い人が、たった一人で契約の場にやって来るとは。
胡散臭いおっちゃんが3人ぐらいでやって来て、その中の金ぴかの腕時計をした1人が、セカンドバッグから帯封付きの現金を出す、といったシーンを予想していたのですが違いました。
私の向かいに座っているのは、外資系サラリーマンが着そうな、パリッとしたスーツを着用している。
そして高級ブランドのビジネスバッグから社判を取り出して、書類にバンバン判子を押していく。
その若さで会社のハンコを預かって仕事をしているのは、よほど信頼されているのか、仕事が出来るのか、それとも人材不足なのか。
そして高級ブランドのポーチから、帯封付きの現金を取り出しました。
想像していたシーンより洗練されて見えたのは、高級ブランドのポーチのせいだったでしょうか。
男性は事務手続きをさくっと終わらせると、「それでは失礼します」と言って、颯爽と部屋を出て行きました。
不動産を売却するのは実家を手放すことでもあったので、私にとっては一大事でした。
でも不動産会社にとっては、いち商品の仕入れといった程度だったんでしょうね。