演じる
- 2026年02月12日
小説「ウチの共有不動産揉めてます!」に登場するきょうだいの一人、春馬。
4人きょうだいの長男です。
子どもの頃から、長男だからしっかりしろと、親やきょうだいたちから言われ続けてきました。
長男が皆、しっかりした性格とは限らないというのに。
そんな圧を掛けられて、グレたりする性格でもなかった春馬は、皆が期待する長男の役を演じようとしてきました。
しかし優柔不断で結論を出せない性格の春馬は、しっかり者の長男の役を演じきれません。
ストレスが溜まるいっぽうの毎日です。
春馬は小さな翻訳会社の社長をしています。
ここでもまた皆が期待する社長の役を、必死で演じようとしますが、会社は自転車操業でうまくいっていません。
公私共に演じることを強要されているなかで、どちらもうまくいっていない状況でした。

昔、私がフリーランスでライターをしていた頃、小さな編集プロダクションから仕事を受けていたことがあります。
その編集プロダクションは当時40代ぐらいの男性社長と、女性編集者2名だけで、書き仕事は全て私のようなフリーランスに、外注するというスタイルをとっていました。
仕事はたくさんあるようで次々に依頼がくるのですが、如何せんギャラが安い。
なので「他の仕事の合間に少しだけなら受けてもいっかなぁ」といったぐらいのスタンスでいた私。
他のライターたちも同じように思っていたでしょう。
こっちも生活していかなくちゃいけませんからね。
ある日、その編集プロダクションで打ち合わせをしていたら、社長がクライアントと電話で話している声が聞こえてきました。
マンションの一室でしたから、聞き耳を立てていなくても、しっかりと聞こえてしまうのです。
どうやら無理めな急ぎ仕事をふられている模様。
社長は一旦断るものの、クライアントから粘られて押し切られそうになっている。
そして5分後。
社長はその急ぎ仕事を引き受けていました。
特急仕事であれば、クライアントに通常料金への上乗せを要求するのがフツーだと思うのですが、社長がそのような交渉をしていませんでした。
社長はライターに電話をかけ始めます。
相手の声は聞こえなくても、そんな締め切りでは受けられませんと、断られている様子なのは分かります。
社長はこれから受けてくれるライターを、探し続けるのだろうなと想像し、そうやっていつも忙しそうにしているのに、全然儲かってなさそうな理由を見つけた気がしました。
その後、そこの編集プロダクションとは縁が切れたのですが、風の噂で廃業したと聞きました。
小説「ウチの共有不動産揉めてます!」の翻訳会社はどうかというと・・・社長の春馬が会社をどうしていくべきか悩み、迷い、そして決断するまでの過程が描かれています。
春馬が変わっていく様子を、見届けていただけたらと思っています。
