採血

  • 2026年02月16日

新刊「ウチの共有不動産揉めてます!」に登場する渚は看護師長。
命を扱う仕事だからミスは許されない。
だから緊張感をもって仕事にあたるように、部下たちに指導しています。

特に厳しくしているつもりはない。
それなのに、気が付いたら渚は職場で孤立していました。

職場の飲み会に一応誘われるけれど、欠席を前提に声を掛けられているのが、アリアリと分かってしまう。
今更仲間に入れて欲しいという訳ではないけれど、なんだかなぁと思っています。

渚の母親が亡くなり、相続した実家の土地と家を、きょうだいで4等分するつもりでいたら、一番下の妹がなんだかんだと言い出しました。

とんでもないことだと憤慨する渚。
そんな我が儘が通るはずもないと思っていましたが、法律上相続人全員が了解しないと売却出来ないため、話は一歩も進まなくなります。

こんな時には長男である兄に、びしっと仕切って欲しいところなのですが、優柔不断で決断出来ない性格のため頼りにならない。
弟は弟で、深く考えずに行動するため、足を引っ張りかねない危うさが。

うんざりしている渚に、追い打ちをかけるように更なる厄介事が。

渚は相続問題に巻き込まれながら、自分の過去と向き合っていくことになります。
渚が最後にどんな決断をするのかまでの過程を描いているのが、小説「ウチの共有不動産揉めてます!」です。
どうぞお楽しみください。

私が年に一度検査のために訪れる病院でのこと。
採血室に入ると初めて見る看護師さんが。
初々しい感じの若い看護師さんです。
それまでの方は辞めたのか姿がありません。

私はセーターを腕まくりして左腕を差し出し、明後日の方向へ顔を向けました。
自分の腕に針が刺さっている現場を見る勇気がない私は、採血の時には大抵顔を背けているのです。

で、ちくっとする痛みを覚悟していると、それがなかなかやってこない。
看護師に目を向けると・・・私の腕に物凄く顔を近づけてガン見している。
そしてその顔には困ったような表情が。

えっ。
「まさか、採血初めてとかって、ことはないですよね」と心の中で尋ねる。

看護師が突然言う。「反対の腕でもいいですか?」と。
不安が大きくなりながらも右腕を差し出す。
また私の腕にぐっと顔を近づけて、真剣な表情。
しばらくそうやってから「はい。こっちの腕で」と言いました。

今、あなたはなにを決めた?
何十年も採血は左腕でして貰ってきましたが、あなたが左ではなく、右で勝負しようと決めた理由はなに?
嫌な予感が胸に広がる。

案の定、これまで経験したことがない強い痛みを感じながらの採血となりました。
そして針が刺さった箇所は内出血してしまい、一週間ぐらい痣が消えませんでした。

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