久しぶりに会った友人が、素敵な腕時計をしていました。
その高級腕時計を褒めると、彼から貰ったのだと言います。
確か、聞き直すほど年下の男性と付き合っていると言っていたので、彼は相当頑張ってその腕時計をプレゼントしたのではないかと推測されました。
そういえば・・・彼女は昔からたくさんのプレゼントを貰う人でした。
美人であるというのが、その理由だろうと思われました。
さらにねだるのが上手なんだろうなぁとも思っていました。
と、急に思い出された光景がありました。
それはクリスマス会と称した集まり。
1人千円以内のプレゼントを用意することが求められました。
それをくじ引きで交換するというのです。
予算が千円ですから、それほどたいしたものが買えるわけじゃない。
当然貰えるものも、たいしたものじゃない。
それでもそのプレゼント交換は大変盛り上がりました。
彼女が貰ったのは、蛍光色のウールの手袋。
非情に残念なプレゼントと言えるのではないでしょうか。
素敵なモノでない場合、ウケるモノにして貰わないと、どんなリアクションをしたらいいか困るからです。
ところが彼女はとても喜んで、両手にはめて皆に自慢するように披露していました。
さらに「これで夜、車に轢かれなくて済むわ」などど、私が思いも付かなかった長所を見つけていたりする。
その喜び方はとても自然で嫌味な感じはない。
思わず「女優だな」と私が呟くほどの演技力。
その手袋を贈った人が誰だったのかもう覚えていないのですが、彼女の喜ぶ姿を見て、さぞかし満足したことでしょう。

彼女はねだるのが上手なのではなく、喜ぶのが上手だったんですね。
だから彼女の喜ぶ様子を見たい人が、プレゼントを贈るのでしょう。
彼女がボーイフレンドだけじゃなく、職場の人や、取り引き先の人や、習い事の仲間からたくさんのプレゼントを貰ってきたのには、理由があったんですね。
蛍光色のウールの手袋を貰った時の喜び方は見事だったと私が言うと、彼女はきょとんとした顔をしました。
彼女はまったく覚えていなかったのです。
「夜、車に轢かれなくて済むとまでコメントしていたよ」と私が言うと、「そんなこと言ってたぁ?」と大笑いしていました。
彼女にとっては記憶するまでのことではなかったんでしょうかね。
去年の秋のこと。
信号待ちをしている時、怪しい雰囲気の女性を発見しました。
20代に見えます。
この女性がやけに辺りを窺うのです。
その周囲を気にする様子で、却って目立っている。
しばらく眺めていると・・・身体を半分に折り、地面にあったなにかを摑みました。
ん?
それは、信号機の横にある銀杏の根元あたり。
もしかして?
と、さらにじっと見つめていると・・・再び前屈し手を伸ばす。
その手にはビニール袋が被さっていて、銀杏の根元に落ちているなにかを広い、すぐにビニール袋をひっくり返して、その手をトートバッグの中に隠しました。
そう、銀杏を拾っていたのです。
ビニール袋を使って手が臭くならないようにしながら。

少し驚いた私は、なおも彼女を見つめ続けました。
きょろきょろと辺りを窺い、前屈し、銀杏を超特急で拾うとすぐにトートバッグに隠す。
これを繰り返します。
ずうずうしい人なら、堂々と銀杏を拾うのではないかと思うのです。
でも彼女は違う。
明らかに人の視線を気にしている。
ということは恥ずかしさや罪悪感的なものがあるのでしょうか。
そうしたものを抱えながらも拾い続けるのは、業でしょうか。
街路樹の銀杏が落とした実は、誰のものなのか。
その道路を管轄しているのが国なのか、都か区なのかわかりませんが、そうした部署の物なのでしょうか?
どこかの物だからこその、そうしたこそこそとした銀杏拾いになっているのか。
ふと周囲を見回すと、銀杏並木は400メートルぐらい続いています。
道の両側にあるので合計800メートル。
結構な本数の銀杏があります。
制覇するつもりでしょうか。
しかし人の視線を気にする彼女はちょっとずつしか拾わないので、制覇するとしたらとんでもなく時間がかかるように思います。
それでも挑戦するのでしょうか?
青信号になり、私はその場を離れたので、その後彼女が目標を達成できたのかどうかはわかりません。
昔、たくさん食べると鼻血が出ると聞いたことがあるので、彼女が鼻血ブーになっていないといいと思います。
今年は秋が短く、あっという間に冬になってしまったような気が。
そして今年、彼女の姿を見ることはありませんでした。
秋が短かったせいでしょうか。
それとも今年も彼女は収穫したけれど、たまたま私が遭遇しなかっただけでしょうか。
彼女に聞きたいです。
今年の出来はどうでしたか? と。
皆さんはどんな朝食を摂っているのでしょう。
友人によれば、朝食を見れば、その人の人生感がわかるとか。
そう言われると、自分の朝食を発表するのが躊躇われます。
が、敢えて挑戦すると・・・。

ある日の朝食の写真です。
スコーンとマフィンと野菜ジュース。
茶色っぽくてあまり美味しそうには見えないのですが、それは写真を撮った私の腕が悪いせいで、実際は美味しいです。
牛乳、卵を一切使っていないスコーンとマフィンで、通販で購入しています。
自分でやってみるとわかるのですが、牛乳と卵を使わずにスコーンやマフィンを作るのはとても難しい。
大抵とんでもないことになります。
なぜ材料費がかかるのに入れるのかといえば、その方が美味しいからなわけで、それを入れずに済まそうとすると、なんらかのアイデアや工夫が必要になります。
で、私には無理。
なので通販でまとめて購入し、冷凍庫に保存しておきます。
そして前夜に翌朝食べる分だけを冷凍庫から冷蔵室に移しておきます。
翌朝になると、スコーンはトースターで温め、マフィンはレンジで30秒温めます。
そうするとスコーンはサクサクに、マフィンはもっちりになります。
味がたくさんあるので、いろんな物を選んで買っておきます。
夜、翌朝の分を選ぶ時、ちゃんと選べばまったく問題ないのですが・・・眠かったんでしょうかね、味がダブるものを冷蔵室に移してしまうことがある。
例えば・・・朝冷蔵室を開けると、抹茶&ホワイトチョコのスコーンと、抹茶&ホワイトチョコのマフィンが並んでいたりする。
はからずも朝から抹茶とホワイトチョコ祭り。
嫌いじゃないから食べますけどね。
朝っぱらから、なんだかなぁといった気持ちになります。
友人にこの写真を見せ、私の人生観なるものを尋ねると・・・「どうかなぁ、そうだなぁ、よくわからない」と言葉を濁されてしまいました。
遠慮して言葉にできないぐらいの人生観が出ているのでしょうか。
その友人の朝食について聞いてみると、コーンポタージュスープだけの日があるかと思うと、カレーライスをがっつり食べる日があったり、ファストフードのモーニングセットの日や、コンビニのお握り1個だけの日があったりと、実にバラバラ。
そういう彼女の人生は・・・波瀾万丈。
本人は「平凡」という言葉に憧れると言っていますが、自らトラブルの中に入って行くタイプ。
彼女の人生観がその朝食に表れているような、いないような。
ほかの友人たちの朝食についても調べてみようと思います。
ホテルが好きです。
私が会食の店を選ぶ担当になった時には、ホテルの中のレストランにする確率が結構高い。
これは単に好きなホテルに行きたいからというだけでなく、他にも理由が。
ホテルは最寄り駅からのアクセスがわかり易くなっていて、そこが初めての人であっても、辿り着き易い。
出口案内表示板などにも、ホテル名が入っていたりしますからね。
さらにサービスが高水準であること。
頑固オヤジや、突き詰め過ぎたオーナーシェフの店なんかだと、独特のルールがあったりして、いつ機嫌を損ねて追い出されてしまうかとハラハラしながらになってしまう。
でもホテルのサービスはいたってわかり易いので安心。
以前編集者と打ち合わせをした時のこと。
そこはホテルの中のカフェ。
コーヒーか紅茶と、好きなケーキを1つ選べる、ケーキセットのメニューがありました。
さらにそこでは、抹茶と和菓子のセットも。
編集者がその抹茶と和菓子のセットに興味をもち「本日の和菓子はなんですか?」と尋ねました。
女性スタッフは羊羹だと答えました。
「〇〇の羊羹なんです」と、その羊羹がホテルオリジナルではなく、羊羹専門店から取り寄せたものだと告白し、さらにその羊羹専門店は老舗でとても有名だとも言い、羊羹をかなりプッシュしてくる。
その女性スタッフの圧に屈したのか、本当に食べたかったからか、編集者は和菓子セットを注文。
私はマイペースを通して、コーヒーとケーキのセットをオーダー。
しばらくして、先ほどの女性スタッフが飲み物などを運んできました。
そして編集者の前に抹茶と羊羹を並べると「ご覧ください。この美しい照りを」と言いました。
思わず、じっと二人で羊羹を見つめます。
確かに照りはあるけれど、ほかの羊羹にはなく、この羊羹にだけ見られるほどの照りなのかは不明。
求められているコメントがなにかわからず、編集者と私は羊羹を見つめるだけで言葉が出てきません。
しばしの間の後「・・・照り、ですか」と編集者が口を開くと、即座に「照りです。美しいです。とても美しい照りです」と女性スタッフは主張しました。
確かに凄い照りですよねぇと乗っかった方がいいのか、羊羹は大抵こんなもんじゃないっすかとクールに指摘するか、どっちが正解なのか。
困惑する私と編集者に向かい、女性スタッフは「ごゆっくりどうぞ」と歌うように言うと去っていきました。
これは高水準でわかり易いサービスなのかとの疑問も湧きますが、私たちの対応力が低かったせいだということにしようと思います。
サービスという形のないものを商売にしている仕事は大変なんです。
マニュアルがあったとしたって、そんな予想通りの展開にはならない方が多いはず。
客たちが望むサービスは色々。
さらにそれに対応するホテルマンたちの個性も様々。
キャリアも違えば、感じ方も考え方も千差万別。
難しいですよね、サービスの仕事って。
働くことが嫌になったり、今の仕事に疑問をもったりしながらも、ホテルがしなければいけないこと、自分ができることを探す人たちが登場するのが小説「総選挙ホテル」です。
「総選挙ホテル」の重版分が11月10日から書店に並ぶ予定ですので、この機会にぜひ。