パソコンの調子が悪く、メーカーのカスタマーセンターに電話した時のこと。
男性オペレーターに状態を説明すると、「それでは、まず左下の隅にあります、スタートボタンを1回クリックしてみていただけますでしょうか?」といった感じの、親切な対応が始まりました。

言われるまま、出てくる画面のあっちこっちをクリックしていきます。
結局、いったん、なんとかっていうシステムを、削除し、新たに、システムを入れるという解決策を取ることに。
私にとっては一大事です。
ですが、この男性オペレーターを信じて、やってみるしかありません。
指示通りに、システムを削除していき、その作業が終わるのを待っている時でした。
ん?
電話の向こうから、「フー、フー」と小さな音が。
もしかして、鼻息?
ヤバイ。
ぷぷぷっと笑ってしまいそうです。
高感度のマイクのせいでしょうか?
それとも、ヘッドホンと繋がっているマイクを鼻に近づけすぎているといった位置のせいでしょうか?
喋っている時には気付かなかったのですが、ただ、パソコンの準備が整うのを待っているだけの、静かなこの時。
彼の鼻息が、私の耳を直撃します。
笑ってしまわないよう、口を押え、パソコンに向かい「速くして。じゃないと、笑ってしまうから」と心の中で必死に訴え続けました。
無事、削除が終わり、ほっとしたのも束の間、今度は、その最新版のシステムをダウンロードすることに。
大容量のダウンロードって、結構時間がかかるんですよね。
再び訪れた静けさの中。
「フー、フー」と小さな音が。
唇に力を入れて、笑わないよう堪えるのが、結構大変。
我慢比べのような状態になりながら、踏ん張っていると、やがて、パソコンが復活。
丁寧にお礼を言い、受話器を置いた途端、ため息と同時に笑い声が出てしまいました。
後日、そのメーカーからメールが来ました。
その後のパソコンの調子はどうかといった質問とともに、アンケートに協力してほしいといった内容でした。
詳しくメールを読んでみると、オペレーターの対応はどうだったかといった項目が。
ここで、鼻息が・・・とは記入できないよなぁ。
対応自体は、懇切丁寧で問題なかったし。
そもそも、あれは、あれで、面白かったしなぁ。
パソコンが作業をしているのをじっと待つという退屈な時間を、あんなに楽しませてくれたのは、彼の鼻息だしなぁ。
結局、このアンケート依頼のメールはスルーすることに。
今日もどこかで、彼は楽しさをバラまいているんじゃないかと考えると、顔がにやついてしまいます。
眼科クリニックへ行きました。
人間ドックを受けたところ、その結果から、眼科で再検査を受けるよう勧められたせいです。
最後に眼科に行ったのは、いつのことか・・・三十年以上も前になるんじゃないかと気が付き、愕然としました。
小学生の頃の私は、「ものもらい」と呼ばれる腫物がよくできて、しょっちゅう眼科に行っていました。
普段から一重のはれぼったい目をしているせいで、「ものもらい」になっても、誰にも気づいてもらえなかったのも、今となっては、笑える思い出です。
中学に入った途端、「ものもらい」とは縁が切れて、以後、眼科に行く機会はありませんでした。
ネットで近所の眼科を探し、訪ねてみると、そこは女医さんがやっているクリニックでした。
診察室で、女医の前に座った途端、思わず、心の中で「おぉ」と声を上げそうに。
和風顔の女医は、一重。
恐らく、そこに生えているであろうまつ毛は、短く、下向きでありましょう。
それを、物凄く一生懸命に、マスカラで立ち上げていたのです。

マスカラをどこにも滲ませることなく、これだけ、思いっきり立ち上げるには、匠の技があるからでは・・・と、感動さえ覚えます。
が、しかし、眼科医として、それはOKなのか? との疑問も浮かびます。
目を大きくすることに無茶をする娘さんたちに「目に悪いから、止めなさい」と、たしなめるポジションじゃないのか?
それとも、ちょっとでも目を大きく見せたい女心がわかる女医として、独自のスタンスを取り、患者を集めているのか?
たくさんの疑問を抱えたまま、女医からの質問に、上の空で答える私。
隣の検査室に行き、女性スタッフの指示のもと、へこたれそうになるほどの数の検査をこなしました。
よれよれの状態で、診察室に戻ると、再び私の目は女医のまつ毛に、釘付けに。
ビューラーの段階で、熟練者としての技があったりするのだろうか?
マスカラは、どこのだろう。
ダマにならずに、こんなに長くできるのは、2度塗りぐらいじゃ無理ではないのか?
朝の支度に、何分ぐらいかかっているのだろう。
好奇心はどんどん膨らんでいきます。
女医のまつ毛に集中し過ぎて、肝心の診察結果は、ほとんど聞いていなかったというオチは、いかがなものかと反省しつつ、クリニックを後にしました。
スピーチは苦手です。
恐らく、脳と口、心と口を結ぶ回線が、うまく繋がっていないせいでしょう。
だから、考えていること、思っていることを、口を通して表現することができません。
「どう思いますか?」とその場で答えを求められるより、「400字詰め原稿用紙3枚にまとめて、明後日までに提出してくれ」と言われた方が、私には楽なのです。
このように、元来の喋りの質が低いうえに、スピーチとなると、緊張という悪魔がやってきますから、もう、悲惨極まりない状態になります。
以前、ある脚本家が、パーティの席で、突然、スピーチに立つことに。
「何分?」と担当者に尋ね、「10分」と言われると、躊躇う様子を見せずに檀上へ。
脚本家は腕時計を外し、テーブルの隅に置くと、喋り出しました。

そして、聴衆を笑わせ、感心させ、驚かせ、場を完全に掌握。
やがて、スピーチを終えると、場内からは大きな拍手。
脚本家が壇上から下りた時、私が腕時計を確認すると、ぴったり10分。
すっげぇと、感心しまくりました。
こういう才能のある人が、とても羨ましいです。
先日、ドラマ「恋愛検定」の本読み&顔合わせなるものに参加した時のことです。
「ひと言お願いします」と言われ、辺りを見回せば、出演者やスタッフ、関係者などが300人以上。
無理。
絶対、無理。
と、思いましたが、「パス」と言えるほどの勇気もなく、また、子どもでもなく、マイクを握るはめに。
しどろもどろに、期待しています的な発言を、もごもごとして、終了。
なんとも残念な空気を場に漂わせてしまいました。
出来としては、最低でしたが、私としては、1ヵ月分の仕事をしたぐらいの疲労感があるから、不思議です。
この場で、ステキなスピーチをしたのは、斎藤工さん。
第二話に出演してくださる斎藤さんは、前日の天気の話から始めたりして、場馴れ感、ありあり。
さらに、今まで殺す役か、殺される役ばかりだったが、今回脚本を読んで、初めて、殺しもせず、殺されもしないと知って、希望の光を見た・・・といった内容の話をされて、私たちを笑かしてくれました。
こういうのが、気の利いたスピーチというんだな、と、お手本を拝見したような気持ちでした。
スピーチ上手な斎藤工さんが出演するドラマ「恋愛検定」第二話は、6月10日(日)22時スタートのNHKBSプレミアムでご覧ください。
第一話を見逃してしまった方は、再放送が(6月7日深夜)6月8日午前0:15~午前1:03までありますので、こちらをどうぞ。
もし、この再放送も見逃してしまったとしても、一話完結型なので、第二話を十分に堪能できることを、お知らせしておきます。
そこは、高級ホテルの中にあるラウンジでした。
3人で打ち合わせをしているうちに、小腹が空いたということになり、軽くつまめるものを1皿頼もうということに。
そこで、サンドイッチを1皿注文。
しばらくして出てきた皿を見て、絶句。
様々な素材を、食パンサイズの2枚のパンで挟んでいるのですが、それがなんと、2つにカットされてあったのです。

3人で1皿注文してるんだから、シェアするつもりで頼んでるのかもしれないと、ウエイターはちらっとも考えなかったんでしょうか?
通常は2つにカットして、提供しているものだったとしても、ひと言、「サンドイッチは3つにカットした方がいいですか?」と確認してみたって、罰は当たらないはず。
私たちの風体が怖かったとして、尋ねる勇気がもてなかったというならば、せめて、キッチンにオーダーを通す時、パンは3つにカットしてくれと頼むぐらい、できたはず。
サービスって、なんでしょう?
私たち3人は、しばしの間、口をあんぐり開けたまま、サンドイッチを見つめていました。
遠慮をしあってしまったせいか、誰もサンドイッチには手を伸ばさず仕舞い。
そのうち、1人が、ひと足先に帰ることに。
もう1人が、トイレに行って、私だけが席にいたところ、件のウエイターが近づいてきて、午後3時で閉店だと言い出しました。
時計を見ると、3時ちょうどぐらい。
いったんクローズして、また、夜になって、バーとして、再び店を開けるスタイルなのでしょう。
今、1人、トイレに行っているので、戻ってきたら、すぐに出ますからと私が言うと、片づけてもいいですか? と、サンドイッチの皿を指差します。
2つにカットされてあるがゆえに、手つかず状態になってしまったサンドイッチを。
なんだ、お前。
と、思った私は「食べます。速攻で食べます」と言い切り、ウエイターを下がらせました。
サンドイッチを食べずに、このまま片づけさせてしまうのは、なんだか、負けたような気分がしたのです。
なんで、そんな気持ちになったのかは、よくわかりませんが、とにかく、食ってやるという強い意気込みで、サンドイッチを食べ始めました。
トイレから戻ってきた人は、サンドイッチをむさぼり食らう私を見て、ちょっと驚いた様子でした。
今の私たちにできることは、このサンドイッチを速攻で食べ終えることだと説明し、その人にも急いで食べるよう促しました。
わざとらしく、側を行ったり来たりしているウエイターをシカトし、なんとか食べ終えると、私たちは店を出ました。二度とこの店には来ないとの決意をしながら。
今、冷静になって考えてみると、2つにカットされたサンドイッチを、さらにカットするよう指示すればよかったんですね。6つとか。
びっくりし過ぎて、その時は、そこまで頭が回りませんでしたが。
サービスとはなにかを考えさせられる、出来事でした。