花が好きです。
ですが、残念ながら、自宅近くに花屋はありません。
十五分ほど歩いたところで、ようやく一軒の花屋を見つけることができます。
そこは、「高っ」と言ってしまいたくなるほどの、高級花屋。ごくフツーにしか見えないガーベラが、どうしてそのような値段に? と尋ねたくなるほど。
そこで、ネット検索。
「花」というと、「プレゼント」という需要が多いようで、花束かアレンジメントになっているものばかり。自宅で飾るのにぴったりな量、種類を提供してくれるところはなかなか見つけられませんでした。
ようやく、見つけたネットショップは、少々価格は高かったものの、希望する花を1本単位で売るというスタイルでした。
試しに、ガーベラ5本を注文。
クール便で届いた箱を開けてみると・・・5本のうち、2本は枯れていました。
運搬途中で、このようになってしまうのでしょうか? 理由はわかりませんが、5本注文して、3本しか使えないというのは、あまりに生存率が低すぎます。それに、クール便の送料も花の値段と較べると、高く感じます。
すぐに諦めてしまう性質の私が、なぜか、花に関しては、ネバーギブアップ精神を発揮して、再びパソコンの前に。
検索の言葉を変えて、再度調べてみると、配達してくれる花屋を発見。
ところが、ところが。
毎週月曜日の午前中に、届けてもらうという取り決めをしたのですが、五回に一回は、届きません。電話をすると、「あっ」と言われてしまいます。
そんなに、難しいことを頼んでいるつもりはなく、毎週月曜日の午前中というのは、比較的、覚えやすいのではないかと思われるのですが、忘れられてしまいます。
そこで、その店は止めて、別の店にお願いすることに。
ところが、その店でも、ちょいちょい、花が届かない事態に。
2つ目の店を止めて、3つ目の店にお願いすることにした時には、「毎週月曜日の午前中に、必ず、忘れずに持って来てください」と念を押しました。
1ヵ月後、花が届かないので、店に問い合わせの電話をした時に、受話器から聞こえてきたのは「あっ」という声。
膝から崩れ落ちそうになりました。
こうなってくると、意地になります。
なんとかして、花を、確実に手に入れてやると、鼻息も荒く、ネット検索することに。
すると、プリザーブドフラワーなるものが存在するという情報に出くわしました。
なんでも、生の花に特殊な溶液を吸収させることで、長期保存できるようにしたもので、水やりなしで、1~3年ぐらいもつとのこと。
これだっ。
私の胸は一気に高鳴ります。
そんなにもつのなら、1度、手に入れれば、こっちのもの。毎週のように、今日は来てくれるかしら? とドキドキしなくてもいいってのが、嬉しい。
たかが花。されど花。
取り敢えず、「初めてのプリザ」などというタイトルの雑誌を購入し、ざっと勉強した後、花をネットで購入。
1輪ごとに、ワイヤーでプリザーブドフラワーを固定したうえで、オアシスというスポンジのようなものに刺していきます。
結構手間暇がかかりましたが、ようやく完成した時には、達成感で、胸が熱くなりました。
以降、自宅の花はプリザばかりに。
ほこりをかぶってしまい、汚く見えてしまうので、年に1度は、総取り換えをするようにしています。
それにしても、毎週月曜日の午前中に花を届けるというのが、そこまで難しいことだとは思ってもみませんでした。
以前、カスタマーセンターなるところへ電話をかけたことがあります。
買ったばかりの電気アンカが、充電できなくなってしまったのです。
不良品じゃないのと、怒りモード全開で電話をしたところ・・・あくまでも声の印象だけですが、なかなかのアダルティーな年頃と思われる女性が電話に出てきました。
電気アンカが故障したと私が言うや否や、「まぁ、それは大変。寒かったでしょう」と、同情心いっぱいの声。
このひと言で、私の戦闘心はくじけそうになります。
私が用意していた文句を思い出そうとしていると、「それじゃ、昨夜は寒くて、眠れなかったんじゃないですか? 申し訳ありませんでしたねぇ」と、言葉を重ねてきます。
本気ですまなさそうに思っているといった声音で。
完敗です。
もう、闘争意欲は完全に失ってしまいました。
気がつけば、「そうなんですよ」と、まるで知り合いに、愚痴っている感じに。
「すぐに、新しい物を送りますのでね。今日は無理なんですけど、明後日には、届けますから。今晩は、寒いけど、なるべくあったかくして、寝てくださいね」などと言われ、いつの間にか、いい人だぁ、などと思っている私。
電話を切った後には、ふむ、なかなかいいメーカーだ、などと満足している有様で。
クレームを、見事に処理したアダルティーな担当者に拍手。
コールセンターに、もっとアダルティーな女性を増やした方がいいんじゃないのかと、思った次第です。
以前住んでいた街の蕎麦屋での話。
その日の私は風邪気味でした。
初めて入った蕎麦屋は、なかなか混んでいました。
席についた私は、飲み忘れてはいけないと、医者から貰っていた薬の袋をテーブルの上に。
注文を取りに来たのが、白い三角頭巾がよく似合うアダルティーな女性。
彼女が、お茶が入っていると思われる湯呑みをテーブルに置いた時、薬の袋にすぐに気付きました。
「薬、飲むの? だったら、水の方がいいわね」と言って、すぐに水の入ったグラスを持って来てくれました。「氷、入れてないけど、薬飲むんだったら、いらないわよね?」と尋ねられ、思わず「うん」と言ってしまいそうに。
初対面のはずが、なんだか親戚の家にでも来たような感じに。
帰りしな、「お大事にね」などと件の女性に声を掛けられ、またしても「うん」と言いそうになったものの、なんとか「はい」と答えました。
蕎麦の味はフツーでしたが、この女性が仕切っているこの店に、また来たい、いや、来なければならない、などと誓ってしまいたい気分でした。
結局、この蕎麦屋には、その後度々通うことに。
その街を離れるまで、蕎麦屋通いは続きました。
蕎麦の味に魅かれたのではなく、女性店員に魅かれて。
人によって、性格がまちまちなのは、もちろんですが、年齢によって、突出してくる共通の個性というのもあるのではないでしょうか。
たとえば、アダルティーな女性に現れてくる、フレンドリーさとか、おせっかいさとか。
これを、ウザいと思うか、いい人だと思うかは、紙一重ではありますが、接客業に限っていえば、とても魅力的な才能のように感じます。
様々な場で活躍する、アダルティーな女性の小説を書いてみたいなぁと思ったりしています。
中学生の頃、相撲部屋に見学に行ったことがあります。
祖母も母も相撲好きで、場所開催中の夕方には、毎日テレビ中継を見ていました。
私は特別、相撲好きというわけではありませんでしたが、当時テレビは一家に一台でしたから、自然と見させられてしまうといった状態でした。
はっきりとは覚えていませんが、恐らく、そんな話を、友人になにかのついでにしたのでしょう。
友人は勘違いしたようで、私が相撲ファンだと思い込んでしまった模様。
その友人は「家の近くに相撲部屋がある」と言い、今度の日曜日に二人で、稽古場を覗きに行こうと提案してきました。
話の展開上、行かなくてはいけないように思った私は、相撲部屋に出掛けることに。
しかし、詳しいことを知らない私と友人が、相撲部屋に着いたのは、お昼頃。すでに、稽古は終わっていました。
私たちは、ちゃんこの準備に追われるお相撲さんたちを、眺めるしかありませんでした。
部屋の前では、追っかけのようなアダルティーな男性ファンたちが、十人ほどたむろっていました。その人たちが、○○の仕上がりが遅れていると、まるで親方のように、真剣に話し合っていたのを、覚えています。
元々、それほど、相撲好きではなく、話の流れから来てしまった私でしたから、ちゃんこの準備をじっと見学するのも、二十分ほどで飽きてしまい、さっさとその場を後にしました。これが、たった一回の相撲部屋見学となりました。
OL時代、同僚の女性に、熱狂的な相撲ファンがいました。
巨乳を売りにしている人で、「胸元をそこまで開けるか」とツッコミたくなるほど、開きの深い服を着る人でした。
残念ながら、このような、セクシーさを売りにしている女性は、同性からはなかなか好かれません。職場でも少し浮いていました。
そのセクシー系の同僚が、チケットが手に入ったといっては、会社を半休して、国技館に通うほどの相撲ファン。
半休した翌日、更衣室に彼女がやってきます。
私服から制服に着替える時、見るとはなく、見えてしまう、彼女のセクシー下着。
そんなの、どこで売ってるんだろうと、販売元が気になってしまいます。
思わず、目が釘付けになってしまうのを、意志の力を総動員して、必死に目を引き離す私。
そんな私の気持ちにはまったく気付かない彼女は、「昨日の○○の右上手は、さすがだった」などと、通なコメントを並べるのでした。
彼女をそこまで虜にする、相撲に、興味をもったものの、その後もなかなか見る機会がなく、いまだに未知の世界。
きっと、奥の深い、魅力溢れる世界なのでしょう。
その世界に、一歩踏み出してみたい気もします。
人を好きになるのに、理由はいらないと申します。
それでは、別れる時にも、理由はいらない?
いえいえ。別れる時には、それなりに理由というものがあるようです。
友人Aが彼と別れた理由は・・・Aは彼と二人でテレビを見ていたそうです。その番組は、Aが嫌いな芸人が司会をしているものだったとのこと。突然、彼が大爆笑。その芸人のギャグに喜び、大笑いする彼を見た時、「別れよう」と決意したそうな。
それぐらい、笑わせてやれよと私は思い、そうAに告げました。
すると、Aは、笑いのセンスが違うということは、人生観が違うということであり、絶対にうまくいかないと確信したのだと、言い放ちました。
私には、まったく理解できませんでしたが、話が長引きそうだったので、「なんとなく、わかる~」と同調して、その話が終わるよう仕向けてしまいました。
友人Bが彼と別れた理由は・・・メンドーになったから。
まぁ、ありますね、こういうこと。
友人Cのケースは・・・食事中、彼には口を開ける癖があり、その咀嚼音のくちゃくちゃという音が気になったから、というものでした。
好きになる前は、咀嚼音はしなかったのかと尋ねると、してたかもしれないが、気がつかなかったとの答えが。そんな大事なところに気付かなかったってのが、凄い。そこに感心。
友人Dは・・・暑くなったから。
夏が目前に迫ったある日、ややぽっちゃり気味の彼を見て、こいつの近くにいると、暑いだろうなぁと思い、それは嫌だわと、感じたとのこと。
涼しくなったら、よりを戻すの? と尋ねると、いったん冷めた気持ちをもう一度燃焼させるには、相当なパワーが必要で、そういうパワーは、四十代の私にはもうない、との回答が。
さいですか。
別れる理由って、人それぞれですね。