バスから見たのは
- 2012年01月23日
大学はとても辺鄙なところにあり、自宅から片道2時間をかけて、通っていました。
まず、池袋に行くまでに1時間。
そこから急行で40分。やっと辿り着いた最寄り駅には、店の1つもありません。
そこからはスクールバス。
左右に広がる畑の中を、バスは走り抜けます。
とにかくだだっ広い土地が、どこまでも続く中を、バスは走るのです。
高校生の頃には「女子大生」というと、キラキラ輝く毎日を過ごす人たちのこと(つまり、チャラい)だと思っていましたが、現実はといえば・・・バスに揺られてド田舎の校舎へ向かう毎日でした。
ある日のこと。
ぼんやりと窓外の景色を眺めていると、茶色の物体が。
なに?
と、思って、よくよく見れば、なんと、馬。
誰かが馬に乗って、パッカパッカ歩いているのです。
バスはその横を走り過ぎます。
寝ぼけているのか、私は。
と、思い、首を精一杯後ろに曲げて、その正体を確かめようとしました。
すると、やはり、馬に乗ったオッサンが、パッカパッカとマイペースで歩いている姿が。
い、田舎過ぎる。
だいたい、いいのか、道を馬が歩いていて。
動揺した私は、隣席で寝ていた友人を揺り起こし、「馬が。馬が、いた。歩いてる」と報告。
すると、あくびをしながら友人が言いました。「知らなかった? ○○先生。乗馬部の顧問。部の馬を家で預かってて、授業のある日は、家から馬に乗ってくるんだよ」
ええええええっ?
そのようなネタを、なぜ今の今まで、私に教えてくれなかったのかと友人に問い質しましたが、「さぁ」と首を傾げるのみで、要領を得ません。
衝撃的な事実を、あっさりと受け入れている友人にも、びっくりです。
20分後、バスは大学に到着。
教室へ入ると、窓側の席に座り、さっきの馬がくるのを待ってみました。
きましたね、10分後ぐらいに。
パッカパッカとキャンパスに入ってくると、そのまま、中庭をゆっくり進んでいきます。
もし、あの馬が本気で走ったら、バスより速いだろうか。
浮かんだ疑問を友人にぶつけると、今度遅刻しそうになった時には、先生に頼んで、のせてもらっておっかなぁとのコメントが。
高校生の頃・・・女子大生になって、こんな会話を友人とすることになろうとは、夢にも思っていませんでした。
輝き一つ、チャラさの欠片も落ちていない、大自然の中のキャンパスライフでした。