文庫「平等ゲーム」の発売
- 2012年04月12日
「平等ゲーム」の文庫が発売になりました。
1600人の島民、全員が平等という社会形態を実現した、瀬戸内海に浮かぶ島を舞台にした物語です。
作品を書く度に、なんらかの挑戦をしています。
この「平等ゲーム」でも、挑戦をしました。
その中の1つが、特殊な社会形態の場所で生まれ、育った青年を主人公にしたことです。
心の動き、変化、痛み、哀しみ、喜び・・・そういったものが、通常とは異なります。
登場人物たちは、すべて自分が創り出したものではあるのですが、私がコントロールできるのは、最初だけ。
一度、命を吹き込んだ後は、それぞれの登場人物たちに、任せてしまう、という感覚で書いているため、彼らの声に耳を傾け、見失わないよう、息を凝らして追いかけています。
勝手に、登場人物たちが、動いてしまうんですね。
「平等ゲーム」では、主人公の耕太郎が、次に、どう行動するのか、なにを感じるのかが、予測できず、いつも以上に、見失わないよう、必死で後を追いかけました。
そして、耕太郎が最後に下した結論――。
へぇ、そうすることにしたんだぁと、私はびっくりしました。
自分が書いているのですが、感覚としては、私になんの相談もなく、耕太郎が勝手に結論を出したといった印象でした。
この決断を、読者は、どう感じるでしょうか?
装丁が、単行本の時とは、随分と変わりました。
単行本の装丁も、とても気に入っていたのですが、文庫では、爽やかさと不気味さが絶妙に混在している装丁に変わり、物語性の強い、素敵なものになっていて、こちらも、お気に入りです。