ペンネーム
- 2012年06月28日
10年前のことです。
デビュー作を発売するにあたって、ペンネームをどうするかという問題が起こりました。
懸賞に応募した時に付けていた、ペンネームはあったのですが、あまり評判がよろしくありませんでした。編集者からは「一生、この名前を背負っていくんだよ。それが、これで、本当にいいの?」とまで言われ、よく考えてみるよう諭されました。
そこで、親が子どもの名づけに困った時に頼るような本を、数冊購入しました。
が、却って、とてつもなく迷うことに。
こういった本を買われる方の場合、すでに名字が決まっているわけですから、その画数を調べて、下の名前に相応しい画数を割り出すといったことができます。
ですが、ペンネームの場合、名字も自由に付けられますから、膨大な言葉の中から、選び出さなくてはならないのです。
思わず、ため息をついてしまいました。
そして、ふと、本名の運勢を調べてみることに。
すると・・・ん?
よくありません。
名前の画数による運勢占いには、諸説あるようだというのは、3冊の本を購入した段階でわかっていました。
旧字を基本としている流派では、旧字の画数で数えていきますし、現代の文字遣いを基本としている流派では、現代の文字の画数で数えていきます。
流派によって、画数が変わり、そうすると、文字のパワーも変わってきます。
ですから、こっちの流派ではあまりよくない名前でも、あっちの流派では大変よい名前となる場合も。
ってことだろうな、と思いながら、別の本を取り上げ、そちらで本名を調べてみました。
が、こっちでも運勢がよくありません。
おかしい。
ということで、もう1冊。
ところが、この本でも、私の本名は、よろしくありません。
あれは確か・・・小学生の頃。
自分の名前をどうやって付けたか、親に聞いてこいという宿題が出たことがありました。
画数の名前占いで、最高のを選んだと聞かされた時の記憶がうっすらと蘇ります。
ってことは、この本がどれも間違っているということ?
これはちゃんと確かめねばと、母に電話をしました。
これこれしかじかと話すと、「あら、とんだところで、バレちゃったわね」とのコメントが。
あまりのことに、口をあんぐりと開けた状態のままでいる私の耳に聞こえてきたのは、「画数の名前占いで名前をつけようとしたのは、本当なんだけど、数え方、間違えちゃったのよね」と言う母の声。
ま、間違えた?
間違えるか、ふつう?
何度も計算してみなかったのかと尋ねると、「そうよねぇ。検算しなかったのしらねぇ」と、まるで他人事のような口ぶり。
計算間違いに気づいたのは、私が1歳の頃だったとか。
雑誌に載っていた姓名判断で私の名前を調べてみたら、よくなくて、おかしいと思い、名前を考えていた当時のノートを引っ張り出して検めたところ、名字の二文字のうちの一つの漢字の画数を間違っていたと気付いたそうで。
電話を切った私は、しばし呆然としていましたが、すぐに気を取り直して、最高級の画数のペンネームをつけてやるぞと、やる気全開になっていました。
どの流派でも大丈夫で、陰だとか陽だとか、そういうのにも気を付けて、やっと考え出したのが「桂望実」。
姓名判断では、大成功間違いなしの名前になりました。
検算、検算、また検算したことはいうまでもありません。