踏み台昇降

  • 2012年02月13日

小中高の体育の授業で、なぜか毎年やらされていたのが、踏み台昇降。
今もやっているのでしょうか?

10cm程度の踏み台の前に並ばされ、教師の合図でよーい、スタート。
その踏み台に、上ったり下りたりし、定められた時間、延々に繰り返すという、面白くもなんともない運動。
日頃、まったく鍛えていない私なんぞは、すぐに息が上がり、僅か10cmの踏み台に足を上げるのもひと苦労。
そして、笛の音とともに、やっと終了。

と、今度は自分の手首に指をあて、脈拍数を数えるという難題が待ち構えています。
大変お恥ずかしい話なのですが、私は自分の脈を計れません。
ドクドクと脈を刻む我が腕が、なんだか気持ち悪くってしょうがないのです。
自分の身体が、自分じゃないような、そんな気がして、怖くなってしまうのです。
ですから、他人の脈なら、いくらでも計れます。
自分のだけ、ダメなんです。

とはいうものの、こんな変わり者の訴えを、体育教師は聞いてはくれないでしょうから、脈を計っているフリをします。
手首からそっと指を浮かした状態で、上空の一点を見つめ、まるで、真剣に数を数えているといった演技をします。
大抵、2人1組でこの踏み台昇降は行われまして、相方の数字を、もう片方が紙に記録するという決まりでした。
私の相方は、ペンをくるくる回して、暇そうにしています。
大丈夫。彼女にもバレていない。
教師がストップと声を上げると、私は両耳に全神経を集中させ、両隣の子らが、それぞれの相方に告げる数字を聞き取ります。
そして、私は二人のだいたい中間あたりの数字を、我が相方に告げます。
こうして、毎年、私のでたらめな数字は記録されていきました。
あれは、なんのために必要なデータだったんでしょうか?

時は巡り、踏み台こそないものの、青竹踏みという、足を上下させる運動を、今では週に数回するように。
なんだかなぁと思います。
自分の脈を計れないのは、未だ変わらずなのですが。

運動

  • 2012年02月09日

運動が嫌いです。
ですが、健康でいたいとの願いはあります。
基本は足腰だと、どこかで聞きかじり、ウォーキングを始めたこともありました。
近所を小一時間ほど、歩くのです。
寒い日、暑い日、雨の日と、当然、日によって、様々な環境の中で歩かなくてはなりません。
そんな時、私の中の怠け者将軍が囁くのです。
こんな寒い日に歩いたら、風邪を引くリスクが高くなるだけだって。止めとけ、止めとけ、と。
怠け者将軍が言うことも一理あるなと、納得してしまい、天気が良くなったらにしようと、その日のウォーキングは中止にし、先延ばしを決定。
こんなことを繰り返しているうちに、結局、ウォーキングは半年も続きませんでした。

そこで、閃きました。
外で歩こうとするから、天気を言い訳にするのだと。
もうこうなったら、自室で歩く。
確か昔、青竹踏みという地味な健康グッズがあったはず。あれは、もう廃れてしまったのだろうか。
ネットで調べてみると、ありました。
最近のは、本物の竹ではなく、プラスチック製が主流のようで、イボ付きのまで発売されていました。
早速、購入。

下の住人に騒音の迷惑をかけてはいけないので、フローリングにバスタオルを敷き、その上に青竹踏みをセット。
この上で足を上下させ、歩いたことにするって寸法です。
が、これが結構辛い。
1時間やろうと思ったのですが、すぐに飽きてしまいます。
外を歩くのとは違って、景色が変わらないせいか、時間が経つのが遅いのなんのって。
あぁ、私の中の怠け者将軍が、またなにやら囁いてきそうだなぁと思っていた時、またまた閃きました。
そうだ、映画を観ながらにしたら、きっと続けられるに違いないと。
そこで、DVDで映画を観ながら、青竹踏みをすることに。
すると、あっという間に、1時間が経過。
これなら、続けられると確信しました。

確信通り、週に約3回、各1時間の青竹踏みを続けて、3年ほどになります。
が、これが、どれほどの運動量なのか、そもそも健康になんらかの貢献をしているのかは、まったくわかりません。
ま、煎餅を齧りながら映画を観るよりは、足を上下させている方が、ましっぽいし、と自分を納得させています。

プロポーズ

  • 2012年02月06日

6年ほど前に、結婚を申し込まれたことがあります。
6歳の男の子から。

当時の私は、4階建てマンションの3階に住んでいて、彼は、1階に住んでいました。
出入り口には、オートロック式のドアがあったのですが、これが結構重くて、レジ袋を両手に抱えた状態だったりすると、押し開ける時には、思わず唸り声が出てしまうほど。

ある時、いつものようにレジ袋を両手に持ったままで、郵便受けの中身を取り出し、さて、ドアを開けようと振り返ると、男の子が。
ぐっと身体を斜めにして、重いドアに体重を預けるようにして、踏ん張っているではありませんか。どうやら、私のために、ドアを開けてくれている様子。
「どーじょ」とまで言っている。
慌てて、「ありがとう」と言って、私が中に入ると、「どういたしまして」と答える男の子。
なんというジェントルマン。
男の子を待っていたと思しき母親にも、お礼を言って、私は自宅に戻りました。

それから一週間ほどしたある日。
私がマンション内を歩いていると、前方に、件の男の子と母親を発見。
すると、突然、男の子は振り返り、「綺麗なお姉さん、こんにちは」と言ったのです。
私はくるりと360度見回して、綺麗なお姉さんを探しましたが、私のほかには、誰もいません。
この子には、人には見えないものが見えてしまう特殊な能力が具わっているのでは? あるいは、ただ単に、普通の人とは違う感性の持ち主か。
取り敢えず、駅前にある眼科クリニックへ行くよう勧めるべきか。
などと、あれこれ思いはしましたが、口にはせずに、「こんにちは」とだけ答えておきました。

またある時には、私が1階の通路を歩いていると、端のドアが開き、男の子が飛び出してきたことも。
そして、「プレゼントです」と言って、1枚の紙を差し出してきました。
見れば、それは彼が描いたと思しき、私の絵。
キュビズム派の流れを汲んでいるかのような、大胆なタッチの作品は、凡人の私には、理解不能ではありましたが、ありがたく頂戴することに。
ドアの前で、男の子の様子を黙って見守っていた母親は、静かに微笑んでいました。

ここまでくると、いくら鈍感な私でも、さすがに彼の気持ちには気付きます。いったい、私のどこが、彼のツボにハマったのだろうと首を捻るばかりです。

そして、来ました。ついに、その日が。
1階の通路を歩いていると、待ちかまえていたかのように、端のドアが開き、男の子が出てきました。
そして、言ったのです。
「大きくなったら、僕と結婚してください」と。
なんと答えるのが、正解なのかわからず、言葉を探しているうちに、「はい、そうします」と即答するんじゃ、軽い女と思われてしまうのではないかとの考えに至り、「ちょっと、考えさせて」と返事をすることに。
すると、みるみる男の子の顔が、泣きそうに歪んでいきます。
ヤバい。と思った私は、大急ぎで「わかった。する」と前言撤回。
「何ぐらい待てばいいのかな?」と聞いてみると、「ん~と、10年」との答えが。
「10年かぁ」と呟いて顔を上げると、静かに微笑む男の子の母親が。
気が付くと、その母親に向かって、「10年後に、またプロポーズして貰えるよう、頑張ります」と宣言していました。
なにを、どう頑張るんだか、よくわかりませんが、取り敢えず、なんらかの前向きな発言をしておくべき雰囲気だったもんで。

あれから6年。
引っ越しをしてから、彼の姿を目にすることはなくなってしまいましたが、願わくば、素敵なジェントルマンのままでいて欲しいもんです。

ノーウェアボーイ

  • 2012年02月02日

DVDで映画「ノーウェアボーイ」を観ました。
いやぁ、良かった。
実在した人物が登場するので、実話なのだろうかといった興味もわいてくるというもんですが、そういったことはうっちゃっておいても、映画として素晴らしい完成度。
一人の青年の孤独と戸惑いを描いた名作です。

青年は伯母のミミに育てられているのですが、この女性が最高なんです。
気位が高くて、素直じゃなくて、厳格で。
でも、青年を深く愛している。
ただ、その愛情表現は、青年にはわかりにくい。
問題児の青年からすると、ガミガミと喧しく言うばっかりの、ウザい伯母さん。
それで、ついつい、実母の方へ。
それを知ったミミは傷つき、さらに強硬な態度を取るようになるんです。
そんなミミも、やがて、ほんの少しだけ変わるんですね。
この変わり度合いが、とてもいい。
ほんのちょっとなんです。
その時点までに、すっかりミミの理解者になったつもりでいる私としては、そんなちょっとの変化にも、心を動かされてしまいます。
そんな僅かな変化でも、ミミにとっては、とてつもない努力がいったであろうことが、わかるからです。
あぁ、良かった、良かったと思ったのも束の間、不幸が襲ってくるという、ドラマチックな展開。
そして、ミミに心を奪われているうちに、あっという間にエンディング。

いい映画だったわ、と思うのと同時に、ミミみたいな女性を書いてみたいなぁとの欲望が。
「下手な人」って、物凄く魅力があります。
ミミの場合は、「愛情表現が下手な人」。
ほかにもいろんな「下手な人」って、いますね。
たとえば、「謝るのが下手な人」「人の気持ちを推し量るのが下手な人」「水に流すのが下手な人」・・・。
こうした「下手な人」が下手なりに、精一杯生きている姿を、小説にしてみたいもんだと、強く思いました。

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